「レース中は不眠不休、山賊や猛獣の恐怖に苛まれ…」 57歳の「鬼軍曹」が挑む、“世界一過酷なレース”の中身…「出場者は全員クレイジー」
グルルルルル……。 耳元で重低音の唸り声が聞こえた。場所はブラジルの湿原地帯、深夜に仮眠を取っていたときのこと。ジャガーだ、と田中正人さん(57歳)は直感した。気温が高いのでテントも寝袋も使わず、草むらで寝ていたため、猛獣と自分をさえぎるものはない。 【写真を見る】危険すぎる…! 道なき道をいき、極限状態まで追い込まれるアドベンチャーレースの様子 すぐそばで眠っている仲間たちも気がかりだったが、恐怖で身体が動かなかった。最初に逃げ出そうとした人が喰われるのだろうな、と思った。どれくらい時間が経ったのか、いつの間にか猛獣の気配は消えていた。
田中さんは仲間たちと無事をよろこんだが、その数分後には何事もなかったかのように、次のチェックポイントを目指して進んでいったのだった。 【写真を見る】危険すぎる…! 道なき道をいき、極限状態まで追い込まれるアドベンチャーレースの様子(14枚) ■山賊の危険、排泄したら葉っぱで拭く 「大自然において、人間の存在意義は単なるエサでしかない、と感じさせられました。でも本来、野生動物ってそうですよね。普通に生活していて、危険を感じないのって人間くらいなんだなと。そんな経験をさせてしまうアドベンチャーレースってすごいです」
プロアドベンチャーレーサーの田中正人さんは、レース中に猛獣と遭遇したエピソードを笑顔で話す。 ほかにも、主催者から海賊や山賊に注意するようアナウンスがあったこと、空腹のあまりニンジンのヘタを拾って食べたメンバーのこと、不眠不休が続いて白目をむいたまま走っていたメンバーのこと、排泄はその辺でして葉っぱで拭くのが当たり前であることなど、冗談のようなエピソードが次々と語られる。 これらはすべて、世界一過酷な競技と呼ばれる「アドベンチャーレース」での出来事だ。
同レースは山、海、ジャングルなど大自然の中を、ランニング、自転車、カヤックなど複数種目で進むというもの。コースは整備されていないことがほとんどで、雪山や崖や洞窟などもある。総距離500キロ以上は当たり前で、ゴールするまでに1週間以上かかることも。チームは男女混合の複数人数で、必ず全員で行動しなくてはいけない。 あまりの過酷さに、出場した約50チームのうち、上位3チーム以外のすべてがリタイアしたこともあるほどだ。映画『アウトレイジ』の「全員悪人」というキャッチフレーズになぞらえるならば、主催者も出場者も「全員クレイジー」ではないか。実際、田中さんがレースにチャレンジする模様は、テレビ番組『クレイジージャーニー』で何度も取り上げられている。