「レース中は不眠不休、山賊や猛獣の恐怖に苛まれ…」 57歳の「鬼軍曹」が挑む、“世界一過酷なレース”の中身…「出場者は全員クレイジー」
■温厚な間寛平さんをキレさせた メンバーは男性4人、女性1人の合計5人。リーダーは寛平さんだが、実質的にチームを牽引する役割は田中さんだった。 そしてレースがスタート。田中さんは相手の気持ちに配慮せず、正論をひたすらぶつけるという、子どものころの性格そのままにチームを牽引していった。それが続くうちに、弟子にも怒らないといわれる温厚な間寛平さんが、「いちいち命令すんな!」とぶちぎれた。 女性メンバーも精神的に追いつめられてしまい、「もうやめて!」と叫び出す始末。何とか無事に完走することができたが、後味はよくない。レースを通じて、田中さんは人間性の至らなさを痛感させられることになったのだった。
「人って正しいことを言われても、気に入らなかったら受け入れないんです。(正論だけを振りかざしても)人間関係でよいことなんてまったくないのに、僕はわかっていなかった。このままじゃいけないと気づいたときに、アドベンチャーレースは自分が成長できる場だなと思ったんですね」 そして田中さんは会社を辞め、アドベンチャーレーサーに転向したのだった。レースは過酷ゆえに、体力の消耗は激しく、頻繁にケガもする。だが肉体的な苦痛よりつらいのは、睡眠不足だと田中さんは言う。
決められた就寝・起床時間などないため、上位成績を目指すならば、仮眠程度しか取らずに進み続ける必要がある。すると、やって来るのは「極限」なのだそう。 「睡眠を削って、極限状態になると本当につらい。精神が崩壊するというか、『もう殺してくれ!』っていうような状態になるんです。それが何日か続くと、幻覚とか幻聴が出てくることもあります」 しかし、もっとも耐えがたいのは、チームの人間関係が崩壊した瞬間だという。田中さんはキャプテンという立場だったが、最初の数年はしょっちゅうチームを険悪な雰囲気にしてしまい、メンバーから非難され、さすがに心が折れてばかりだった。