森保Jに2つしかなかった収穫
カメルーンは両センターバックにアンカーのグエットも加わり、ビルドアップを行うパターンが多かった。大迫とトップ下として先発した南野の2人では数的に対応できず、プレスの一の矢から後手を踏む。必然的に相手の両サイドバック、そして2人のインサイドハーフへの対応も甘くなる。 身体能力に長けたカメルーンは、ポルトガル出身のトニ・コンセイソン監督のもとで戦術的にも洗練されていた。プレスをかいくぐられ、悪戯に体力を消耗する悪循環を断ち切るためにも、後半開始から大迫、南野、堂安のトライアングルでカメルーンの攻撃の起点と数的同数になる状況を作った。 その上で原口と伊東が意図的に高い位置を取ることで、相手のサイドバックを押し込む。さらにインサイドハーフの2人を、柴崎と中山のボランチ2枚でケアしていく構図に変わった。 「前半は攻撃陣がフィジカル的にもしんどかったと思うけど、逆に後半は前からはめにいったことで、僕たち後ろがスライドする距離やマンマークする時間が長くなって大変でした」 試合後に思わず苦笑いを浮かべ、3バックを組んだ左右のストッパー陣への信頼感を込めながら、吉田はわずか数日の練習をへて実戦導入された新システムへの手応えを深めている。 「ポテンシャルがある冨安選手は、いままさに(ボローニャで)新たな経験にチャレンジしている。酒井選手がプレーしているフランスはアフリカ系の選手が多いので、対峙することに慣れていると見ていて感じました。もちろん僕自身も長くヨーロッパでプレーしてきて、いろいろなタイプの選手と戦ってきた。今日のような相手にも個の戦いで十分に戦える、というのは感じたところですね」
だからこそ、後半に入って上向いた内容に結果を伴わせるためにもゴールがほしかった。例えば後半4分。右サイドを突破した伊東が相手を振り切って絶妙のクロスを供給するも、走り込んできた大迫が放ったヘディングシュートはゴールの枠をとらえられなかった。 「あれは決められるチャンスだったし、あそこを突き詰めていかなきゃいけない。後半に修正できたことはプラスなので、あとは僕が得点を取る、ということをぶれずに追い求めていきたい」 フォワードに課される最大の仕事を完遂できなかった悔しさを大迫が口にすれば、名門リバプールへ移籍してから初めて臨む代表戦で「10番」を背負った南野は、もっと個を高めたいと前を向いた。 「前半などはビルドアップから自分たちの形で綺麗にゴールを狙うよりも、ボールを奪った後に多少強引な形でも相手ゴールに向かっていくプレーも、個の力で打開していくプレーも必要だと思っている。幸いにしてまた次に試合があるので、しっかりと準備していきたい」 現地時間13日には同じスタディオン・ハルヘンワールトで、コートジボワール代表との国際親善試合に臨む。新型コロナウイルス感染に関してブレーメンと日本サッカー協会とが協議した結果、大迫がカメルーン戦後に離脱したため、攻撃陣に関しては新たな形を構築する必要もある。 「久しぶりの代表戦でフォーメーションを変えながら、新しい選手を含めていろいろと試せて、なおかつ非常にコンディションのいい強い相手と試合ができたことは、日本にとって非常に大きな強化になったと思う。3バックに関しては動きの質をまだまだ変えていかないといけないけど、4バックが上手くいかないときにこういうオプションがあれば、チームとして幅ができるんじゃないかな、と」 決して悲観することはないとばかりに、吉田はチームを代表するように「個人的には本当に楽しかった。あっという間の90分でした」ともつけ加えた。来年3月以降に延期されたワールドカップ予選、そしてその先に待つカタールでの戦いへの挑戦を加速させていくためにも、コートジボワール戦を含めて残り4日間の今回の代表活動を、1分1秒も無駄にすることなく充実させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)