ポーラ美術館がフェリックス・ゴンザレス=トレスの代表作《「無題」アメリカ#3》を新収蔵&初公開
1990年代にクィアな芸術実践を牽引したフェリックス・ゴンザレス=トレスの作品
ポーラ美術館が、フェリックス・ゴンザレス=トレスの代表作《「無題」アメリカ#3》(1992)を収蔵し、現在コレクション展にて展示中だ。同館は本作を戦後アメリカ美術のコレクション(抽象表現主義からミニマル・アートへの流れ)と、その後の現代美術への展開との間をつなぐ、重要な位置を占めるものとして位置付ける。 「ポーラ美術館コレクション選|印象派からリヒターまで」(展示室3)にて、12月1日まで展示されている。 《「無題」(アメリカ#3)》は42個の電球が連なる電気コードによって構成された「ライト・ストリングス」と呼ばれる作品のシリーズで、キャンディのシリーズに並ぶゴンザレス=トレスの代表作のひとつ。作家の手がけたほかの作品と同様、電球は身近にある一般的なものが使用されており、寿命が尽きると交換される。このシリーズは、1991年に作家の恋人がエイズで亡くなった直後から、自身が同じ病でこの世を去る約1年前までの数年の間に制作されたもので、時間とともに消耗していく電球は、命の終わりや喪失を暗示している。 いっぽうで、寿命が切れる度に電球が交換されることで、作品は再生を繰り返しながら永続的に存在し続け、一つひとつの生に与えられた有限の時間と、生と死の連続の中で見いだされる永遠の時間を鑑賞者に問いかける。 フェリックス・ゴンザレス=トレスは、1957年キューバ生まれ。主にニューヨークで活動。ミニマリズムなど1960年代に隆盛したさまざまな動向の手法を引き継ぎながら、電球や時計、鏡やキャンディなど身の回りのものを用いて、観客の参加を促す作品や、街中の看板を利用した作品など多様な作品を制作。その作品は明快・詩的でありながら極めてラディカルであり、ミニマリズムの文脈にとどまらず、むしろその動向に再解釈を与えた。1990年代以降の美術史において最も重要な作家の一人であり、早逝後も、今日にいたるまで多くの後進に影響を与え続けている。
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