重い病気の子どもを運ぶドクタージェット ドクターヘリとの違いは?…1例目は石川県から愛知県へ搬送
医療機器を搭載した小型ジェット機で、主に重い心臓病などの子どもを医師らが治療しながら広域搬送する「ドクタージェット」の国内初の本格運用が、今年から進められています。これまでに6人(成人2人含む)を運びました。(竹井陽平) 【図解】ドクタージェットを使った、これまでの主な搬送例
この取り組みは、大阪大病院(大阪府吹田市)や国立循環器病研究センター(同)で長年、心臓移植手術に携わってきた千里金蘭大学長の福嶌教偉(のりひで)さんらが始めました。NPO法人「日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク」(JCCN)を作り、学会や医師会などを通じて、全国の小児科医らに「高度な治療が必要な子がいたら連絡を」と呼びかけました。
今春から本格運用
そして4月19日、初めて患者を運びました。心臓に血液を送る冠動脈の一部が非常に狭くなる「左冠動脈主幹部高度狭窄(きょうさく)」のため、金沢大病院(金沢市)に入院していた0歳の男児です。 早期に治療しなければ心筋梗塞(こうそく)になるリスクが高いため、金沢大病院の小児科医がJCCNに連絡し、治療実績が豊富なあいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)で手術を行うことが決まりました。 ドクタージェットは、男児と同センターの小児専門重症搬送チームを乗せて小松空港(石川県小松市)から愛知県営名古屋空港(豊山町)へと飛び立ちました。着陸後、待機していた大型ドクターカーがリレーする形で、同センターに搬送しました。 5日後、左冠動脈の手術が行われ、男児は搬送後1か月足らずで退院できました。これまでは麻酔をかけるだけで心肺機能に悪影響が及ぶ可能性があり、命の危険にさらされる状態でしたが、手術後は体調が大幅に改善しました。両親は「これから色々な治療に取り組んでいける」と喜んでいるそうです。 このケースでは、218キロが2時間56分で結ばれました。同センター集中治療科医長の本村誠さんは「陸路では8時間以上かかります。飛行機で運べて本当によかった」と話しています。