「データを見るのが好きなんですよね」DeNAを日本シリーズに導いたMVP捕手・戸柱恭孝が打倒ソフトバンクのカギを握る…CSで巨人を惑わせた配球
早め早めの継投策がポイントに
そこで両軍の投手陣を見比べてみると、ソフトバンクがシーズンからCSと他チームを圧倒してきた理由が見えてくる。 完投数こそ5つしかないものの、ソフトバンクの先発陣の防御率は12球団で唯一2点台の2.58。クオリティースタート(QS)率は実に62.94%を誇っている。一方、DeNAの先発防御率は3.23で12球団の9番目。QS率51.05%はヤクルト(41.96%)に次ぐワースト2位という数字だ。 このデータからもDeNAはCS同様に早め早めの継投策で、いかにソフトバンク打線の目先を変えて凌いでいけるかがポイントになるのだろう。 実際問題としてCSではDeNAのリリーフ投手の奮闘が、勝負を分けるポイントになっている。 「CSでも勝ち抜くためにはというのをみんなで意見を出し合って環境設定だったりマインドを整えて、一体感を持ってやる時間を作れた。CSではイレギュラーなことも多々あったんですけど、それに選手がうまく対応してくれたので、選手のおかげで勝ち抜けたファイナルステージだったかと思います」 こう語るのはブルペンを預かる小杉陽太投手コーチだったが、典型例はファイナル第3戦の継投だった。 この試合は先発の吉野光樹投手が3回でマウンドを降りると、そこから佐々木千隼投手、中川颯投手、山崎康晃投手と繋いで、最後はクローザーの森原康平投手で1点差を逃げ切った。問題は4番手でマウンドに上がった山崎だった。当初は1イニングの予定だったが、7回を2三振で切り抜けてベンチに戻ってから続投を決定。回またぎの8回も無失点で切り抜けて森原にバトンを渡している。 「康晃でここは賭けるぞ、といわれて、自分からも行かせてくださいと言いました」 この場面を振り返った山崎だ。普段からコミュニケーションを密にとることで、臨機応変の起用に選手も戸惑いなく入っていける。こうして選手のマインドをしっかりと整え、環境設定も抜かりない。 ファーストステージの舞台となった甲子園球場では、ブルペンがスタンドの喧騒から隔絶されているので、リリーフ投手は必ずベンチで球場の雰囲気を確認してからブルペンに行き、そのブルペンでは扉を開けて球場の歓声が聞こえるように工夫を凝らしたりもした。 ポストシーズンをどうしても勝ち上がれなかったチームをどう変えていくか。環境や選手のメンタル面からのアプローチを変えた。その上で主戦捕手が戸柱となった変化がDeNAリリーフ陣に化学反応を起こしているということだ。
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