繊細な手技を未来へと繋ぐ「うちわの太田屋」
ー房州うちわは2003年に国の伝統的工芸品に指定されています。日用品としての需要は減りましたが、工芸品となり、また新たな魅力、価値が生まれていると感じています。職人の高齢化や後継者不足などの課題もありますが、この先、伝統を繋ぐためにどのようなことが必要でしょうか。 地域の後継者育成事業がここ10年ほど続いて、そこでうちわ作りを習得した人のうち、作品を販売できるまでになった方は5人いらっしゃいます。うちわ作りで食べていきたいという方や工房を開いて自分で作ったうちわを販売しはじめている方もいます。 この事業は続いていきますし、これから先もどんどんうちわ作りの担い手は出てくるでしょう。この先、太田屋がなくなったとしても技は残る。技はもう繋いでいますから心配していません。 ー後継者育成で心がけていることはありますか。 職人を目指す皆さんにはうちわ作りの全工程をできるようになってもらいたいと思っています。以前は分業できる職人さんがたくさんいたので、工房主である親方の仕事は荷造りと納品書、請求書、領収書が書ければ務まったのですが、今はそうもいきません。 うちわ作りを学びはじめた人から「何年くらいで職人になれますか?」と聞かれますが、「何年ではなく、とにかく数を作ってください」と伝えています。 私はよく冗談で「商売敵を育てているんですけどね」なんて言うのですが、若い人が入ってこないと活気づきません。最初は何も分かっていなくてもいいんです。やる気がある人が入ってくれさえすれば、その業界は活気づいていく。伝統はそうやって繋いでいけると思います。