Cookie消滅、プライバシー規制、AI、ストリーミング戦争 ─ 米DIGIDAY編集長ジム・クーパーの2024年注目トピックは?
ChromeでのサードパーティCookie廃止という節目を迎える予定の2024年。メディアとマーケティングの世界はどのように変化していくのか? Cookieレスへの対処は言わずもがな、デジタルプライバシーへの対応や悪質なデジタル広告、さらにはジェネレーティブAIの存在などといった業界の課題は山積している。ブランド、パブリッシャー、そしてエージェンシーの人々にとって、誠実かつ分析に富んだ情報を掴むことが、より重要な年になってくるだろう。 DIGIDAY[日本版]では、業界の最先端を走る米国のメディアとマーケティングを知りつくした、米DIGIDAY編集長のジム・クーパーに、業界の現況と展望を聞いた。 ジム・クーパー(Jim Cooper)/米DIGIDAY編集長。MediaweekおよびAdweekを経て、2020年にDIGIDAYに参加。20年以上にわたってメディアとマーケティング業界にフォーカスした高品質なコンテンツを生み出してきたキャリアを持つ。客観性と専門性を両立した透明性の高いジャーナリズムをリードし、読者の興味を引くアイデアを生み出すことに定評がある。 ◆ ◆ ◆
──あなたの編集長就任から今まで、パンデミックや戦争、ジェネレーティブAIの台頭やデータ利用によるプライバシー侵害への懸念の高まりなどさまざまな出来事があった。マーケティング業界への影響は?
この数年間はますます状況が複雑化していて課題も多いのは確かだ。しかし、課題のなかには興味深い変化を促すものもある。DIGIDAYの編集方針を決める際は、そうしたマクロな視点を念頭に置いている。 メディアそしてマーケティングの領域で最大のトピックは、GoogleのサードパーティCookie廃止とトラッキングの終了だ。2024年に入ってすぐ、GoogleはサードパーティCookie廃止における最初の一歩を踏み出した。最近まで果たして本当に実行されるのかという声も聞かれていたが、ついにそれが本格化した。現状では廃止に向けて準備を進めている企業とまったく手付かずの企業がある。しばらくは混乱が続くだろう。 サードパーティCookieなき後にその空白をどう埋めるのか、決定打となる方法はまだ出ていない。ファーストパーティデータやアテンション指標をどう活用していくのかという議論をはじめ、多種多様なソリューションやコンセプトが取り沙汰されている。今後はそれらが本格的にテストされていくことになるだろう。そのひとつひとつを記事にすることができるのはDIGIDAYにとっては素晴らしい機会だ。 また、デジタルプライバシーへの意識が高まるなか、マーケターは消費者に納得してもらえる方法を探りつつ、それと同時に世界各国で整備が進められている規制に従うことが求められている。 2024年は米国にとっては大統領選挙の年だ。これによって偽情報・誤情報の問題がさらにクローズアップされるだろう。これに関しては興味深いジレンマがある。選挙に対する人々の関心は非常に高いものの、広告主やマーケターはニュースメディアへの出稿にはかなり慎重になっている。社会の分断が深まるなか、とりわけ報道分野のパブリッシャーはブロックリストの問題に悩まされている。しかしながら、おそらく11月の選挙に向けたこの数カ月のあいだ、米国の大統領選挙史上かつてないほど多くの広告費が投じられると予想される。