政治集会というよりまるで「フェス」? 韓国大統領弾劾の裏でうごめく権力闘争
ソウル・汝矣島に向かう午後の地下鉄は、東京のラッシュ時を思わせるほどのすし詰め状態であった。地上に出てからも、国会議事堂の方へと向かう人波に揉まれる。 【この記事の他の画像を見る】 どうにか広大な汝矣島公園に辿り着いたが、気づくと身動きが取れないほどの密集の真っただ中にいて、整理・誘導をする警察官らの姿はまばらだ。ふと梨泰院で起きた圧死事故が頭をよぎる。 ■K-POPが流れ、ペンライトが振られる それほど、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の2度目の弾劾訴追案が可決されるのを求めて12月14日に集結した韓国の人々は多かった。警察の発表で24万5000人。
人々が朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の退陣を求めた2016年から2017年にかけてソウルで続いた「ろうそく集会」では最大で100万人が参加したというが、私の体感では14日の集会もそれに近いように思えた。 一方で、かつての「ろうそく集会」とはだいぶ様相が変わったことにもすぐ気づいた。当時は市民がろうそくを模したライトとプラカードを手にしてひたすら地面に座り込んでいた。 今回はろうそくは少なく、主役はコンサートでファンたちが振るペンライト。色や形は様々。それを、参加者たちは大音量で流れるK-POPのヒット曲に合わせて振り、踊る。まるで野外フェス。
そうした雰囲気だからか、10代から20代前半の女性がかなり多かった。女子高校生の3人組に尋ねてみると「うん、前回より自分たち世代の女子が多いでしょ。前のときも参加したいなと思ったけど、『まだ幼いから』と親に止められたのよね」との答え。 なるほど、「ろうそく集会」をテレビで見た子供たちが成長したのだ。 加えて、当時暴力沙汰が起きなかったことから、韓国の保護者たちとしても10代の娘が尹錫悦を糾弾する集会に行くことにさほど心配はないのであろう。
汝矣島に赴く前に、光化門で開かれていた保守派の弾劾反対集会も見に行ったのだが、そこでは退役軍人らが「(最大野党・「共に民主党」の代表)李在明を逮捕せよ!」と雄叫びを上げる野太い声が響き渡っていた。 規模は警察発表で4万人。ざっと見渡すと参加者たちの平均年齢は60を超えているのは確実と思われた。 おそらく全員が、前回の朴槿恵弾劾にも強硬に反対し続けたであろうコアな保守派だ。手にしているプラカードには「主思派(チュサパ)を剔抉(てっけつ)せよ」の文字。主思派とは北朝鮮がイデオロギーとして掲げてきた主体思想に従う人たちを指す。