92歳女性が「老人ホーム入居の夢」をあきらめた訳 老いの現実を知り、上手に付き合うためのコツ
消費者庁の資料にある「65歳以上の不慮の事故による死因別死亡数」[注1]によると、2021年の「交通事故」による死者数は2150人。「溺死・溺水」によるものが6458人(約8割が浴槽内)で、交通事故の3倍程度です。 不慮の事故による死因は、「溺死・溺水」「不慮の窒息」「転倒・転落・墜落」の順に多くなっていきます。家のなかで起こる事故がほとんどなのです。 できるだけ長く自宅で暮らすには、いざというときの助けをどこに求めるか決めておくこと。終の住みかを有料老人ホームにするのであれば、その資金はどう調達するのか。体が動くうちに老いの現実と向き合い、考えておく必要があります。
注1:消費者庁リーフレット「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」2022 ■後期高齢者の仲間入りで湧いてくる億劫の虫 老いの覚悟の1つは、「億劫」という気持ちに負けないこと。ある年配の女優さんが「年をとったらすべてが億劫さとの闘いである」とおっしゃいましたが、その通りです。 食卓を整えるのも、お風呂に入ることさえも、なかなか行動に移す気になりません。体を動かさないと次に進めないので、「エイッ!」と気合いを入れて、無理やり自分を鼓舞している状態です。
億劫は「老っ苦う(おっくう)」。これを老っ苦うといわずして何と呼べばいいのでしょう。まさに、老いの苦しみとの闘いです。 友だちに会いに行くのも、以前はあんなに楽しみにしていたのに、いまは雨でも降ろうものなら、出かけるのが億劫でやめてしまうありさま。家で寝っ転がって、テレビでもみていたほうが楽だと思うからです。 「これではいけない」と思い直し、そのたびに、億劫を追い払っているわけですが、闘い過ぎると疲れ果て、逆に生きる気力が萎えてきます。がんばりが効かないのも、また老いなのです。
はて私は、何歳ぐらいまで億劫さを感じなかったのか? 振り返ってみると70代半ばくらいまでは、地方での講演も苦にならず、元気よく行っていました。それが「アラ傘寿(さんじゅ)」の声を聴くようになった頃から、億劫の虫が頭をもたげてきたのです。 75歳以上の人を「後期高齢者」と呼ぶのはいかがなものか、と思っていましたが、75~80歳くらいが、老いの階段を上がり始める1、2歩めであることは認めざるを得ません。