92歳女性が「老人ホーム入居の夢」をあきらめた訳 老いの現実を知り、上手に付き合うためのコツ
人生100年時代がやってきました。長い老後をどのように過ごせばいいのでしょう。 最期まで前向きに生きるためには「老いゆく自分を客観的にみつめ、受け入れること」「視野を広げて自分の置かれている状況、社会的な状況を知ること」この2つが大切だという、評論家の樋口恵子さん。現在92歳の樋口さんが、日々感じていることや実践していることを『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から3回に渡ってご紹介します。 1回目は「老いの現実を知り、うまくつき合うワザ」を考えていきます。
■80代半ばを過ぎるとみんなヨタヘロになる 2~3世帯同居の大家族が激減し、もともと1人世帯だったり、夫婦で暮らしていてもどちらかが亡くなったりと、さまざまな事情により1人で暮らす高齢者が珍しくない時代になりました。 ひと昔前なら周囲の人に、「1人暮らしは寂しいでしょう」と言われたものですが、いまは当たり前過ぎて同情もされません。 そして、その自立した1人暮らしにも、やがて限界がやってきます。92歳になった私の実感でいえば、75歳からの後期高齢者のなかでも、80代半ばまでの前半の老いと、それ以降の老いとでは、体の状態がだいぶ違うのです。
私は50歳のときに右膝を強打して、それが治りきっておらず、外出のときにはサポーターをつけています。そうすると調子がよいのです。70代までは国際会議にも出かけたし、国内外の旅行には何度も行き、なんら不自由はしていませんでした。 ところが、80歳を過ぎた頃からだんだん怪しくなってきたのです。それでもまだ、講演を頼まれれば、1人で行く元気がありました。 そんなある日、私が育った東京の練馬区で講演会があり、帰りに地元の友だち数人で集まることになりました。すると、「足が悪くて歩けない」、「老いた夫の病院のつき添いがある」などの理由で、参加できない人が何人もいたのです。「みんなヨタヘロ期に入ったんだ」と思いました。