「平時の備え」を充実、新感染症対策の行動計画を閣議決定 政府、10年ぶりに抜本改定
だが、いざパンデミックとなると、感染症医療と通常医療の両立は容易ではない。新型コロナの再流行や新たな感染症に対する医療体制に不安を感じる臨床医は多い。昨年8月まで対策推進会議議長を務め、コロナ禍を通じて政府に100以上の提言をしてきた尾身茂氏は「感染症対策に唯一、絶対の正解はない中で社会経済への負荷を最小限にし、感染拡大防止策を最大限にすることを目標にしてきた。具体的対策となると一つの正解を見つけるのは困難だった」と振り返る。
再流行に引き続き注意を
厚生労働省は12日、全国約5000の定点医療機関から1~7日に報告された新型コロナウイルス感染者数は3万9874人だったと発表した。1医療機関当たりの感染者数は8.07人で、前週と比べると約1.4倍。9週連続で増加している。全国約500の定点医療機関から報告された新規入院患者数は2340人で、前週比で同じく約1.4倍だった。
都道府県別に見て1医療機関当たりの感染者数が多かったのは沖縄県の29.92人、鹿児島県23.13人、宮崎県19.74人など、九州や沖縄での感染者増が目立っている。一方、秋田県2.13人、青森県2.42人など東北で少ない。広島県は6.1人だが、同県は11日に独自の「新型コロナ医療ひっ迫注意報」を発令した。
林芳正官房長官は12日午後の記者会見で「広島県が独自の注意報を出したことは承知している。全国でも緩やかな増加傾向にある。政府としては国民の皆さんに対してせきエチケットや手指の消毒などの感染対策を周知しており、引き続き先々の感染動向を見据えながら適切な感染対策に努めている」と述べた。
社会経済活動とのバランスを考慮しながら、新たな感染症の大流行や新型コロナの再流行に備える。その作業は簡単ではないが、この社会全体が行動変容も伴ったコロナ禍を経験した。過去を検証する姿勢を忘れずに新行動計画についても実施状況を絶えずチェックし、必要に応じて柔軟に改正する必要があるだろう。
内城喜貴/科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員