「平時の備え」を充実、新感染症対策の行動計画を閣議決定 政府、10年ぶりに抜本改定
新計画では国や都道府県がどう総合調整や指示をするべきか明確化している。「国の役割」として「国全体として万全の体制を整備する責務がある」と明記し、ワクチンや診断薬、治療薬の早期開発や確保に向けた責任も定めた。
都道府県に対しては、病床確保や発熱外来、自宅療養者への医療提供などについて平時から医療機関と協定を締結して「感染症有事」に迅速に対応できるよう求めている。また市町村については「住民に最も近い行政単位」と位置付け、都道府県や近隣市町村と連携してワクチン接種や要援護者の支援を的確に行うことを要請している。
情報提供や発信に伴う混乱もあった。13項目の1つに「情報提供・共有、リスクコミュ二ケーション」も含まれ、他の項目同様「準備期」「初動期」「対応期」ごとに取るべき対応を定めた。例えば、準備期の双方向のコミュニケーションの在り方として「国はリスクコミュニケーションを適切に行えるよう、偽・誤情報の拡散についてモニタリングし、情報の受け手の反応などを把握できる体制整備をする」としたほか、国のコールセンターの整備・拡充なども盛り込んでいる。
全国民が当事者だったコロナ禍
新たな行動計画策定の基礎となったコロナ禍について、同計画は「全ての国民がさまざまな立場や場面で当事者として感染症危機と向き合った。パンデミックに対し社会全体で対応する必要があることを浮き彫りにした」と総括した。そして「感染症危機は決して新型コロナ対応で終わったわけではなく、次なる感染症危機は将来必ず到来する」と強調している。
「新型コロナ禍では政府の行動計画に基づいた事前準備が不十分だったために医療逼迫(ひっぱく)が起きた」。新行動計画はこうした反省から生まれたが、一連のコロナ禍対応そのものの検証が足りないと批判する専門家もいる。新計画ができた後でも必要に応じて個別の検証作業も必要だろう。
政府は感染症対策の決め手として、23年9月に国としての対応の司令塔を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を発足させた。また新型インフルエンザ等対策推進会議の議長らも交代させて感染症体制を一新した。25年4月には政府に科学的助言をする「国立健康危機管理研究機構」(JIHS)も創設する予定だ。政府はこうした新しい機構の整備に加え、新行動計画を柱として次のパンデミックに備えた体制整備が一応整うとの立場だ。