フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
はじめに
今回のテスト物件、見かけで判断するのとは別物だといえる。パッと見、この新型フィアット600は、これまでの500Xに代わるモデルのようだが、そうはいえないのだ。 【写真】写真で見るフィアット600とライバル (16枚) 既存クロスオーバーモデルの500Xは、この先少なくとも数年は生産が継続する見込み。それよりもわずかに小さくて車高も低いハッチバックの600は、500の4ドア版的な位置付けとなる。ちょうど、1950年代の元祖600がそうだったように。2018年にプントを引き上げた、欧州の伝統的なBセグメントへ復帰を果たしたというわけだ。 とはいえフィアットは、500での成功を可能な限り多くのマーケットにコピペする使い古された商品戦略を長らく使い、また既存500オーナーに乗り換えを推進するべく、目新しく興味を引く理由を提供し続けてきた。600でも、500eのオーナーは重要なターゲットだ。 そのため、48VマイルドハイブリッドだけでなくEVも用意した現代版600。プラットフォームはステランティスのe-CMP2で、しかしシャシーやバッテリー、モーターを共用する他車より価格を抑え、フィアットらしいお買い得感を打ち出している。 こうして、1970年以降はじめて、500と600が同時にラインナップされたのだが、今回は安価なガソリンMHEVの準備が間に合わず、いきなりEV仕様の600eがロードテストの俎上に載せられることとなった。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
600の全長はおよそ4.2m、全高は1.5mを超え、Bセグメントとしては大きめで背の高いハッチバックという感じ。500Xを数cm下回るのみだが、この2モデルがオーバーラップするのは一時的なものだろう。500X後継は別に準備中だと言われるが、そちらはより大きなサイズになるはずだ。 しかし、この600の寸法を細かくチェックしてみると、500Xよりも、同じステランティスのポーランド工場で生産される兄弟分のジープ・アヴェンジャーに近いことがわかる。ホイールベースはまったく同一で、全高と全幅もほぼ同じ。その他の共通点はこの後触れるが、フィアットにとって有利に働くものばかりではない。 エンジンは1.2L直3ガソリンに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたもので、トランスミッションはe-DSC6ことハイブリッド向けギアボックス。ステランティスが広く用いるコンポーネンツだが、出力は100psで、他車の136ps仕様より控えめだ。 EVは、156psの他励同期モーターと54kWhのバッテリーを搭載。これは、最近登場したプジョーe-308やヴォグゾール・アストラ・エレクトリックなどと共通だ。後輪駆動が一般的になっている中ではニッチなFFレイアウトで、同価格帯ではピークパワーもバッテリー容量も少なめだが、フィアットは効率でカバーするとしている。 たしかに、最上位機種でも実測1600kg以下というウェイトは、このクラスでも軽いほうに入る。比べると、ルノー・メガーヌE-テックは約100kg、スマート#1は300kgほど重い。それでいて、ヒートポンプは標準装備。シャシーは、前ストラット/後トーションビーム+パナールロッドというシンプルな構成だ。 エクステリアはキュートさを前面に押し出し、マンガチックなディテールも盛り込んだ。600のロゴは、多すぎるくらい散りばめられている。しかし残念なのは、500でカラーやトリムをあれだけ豊富に用意したフィアットが、600eにはわずかなボディカラーしか設定せず、内装の色とトリムの組み合わせも乏しいことだ。ステランティスを率いるカルロス・タバレスが合理主義の信奉者であることを呪いたくなる。