最後に家に帰ったのは2年前…13歳から道端に立ち、パパ活で「1回2万円」を稼ぐ少女の実像【Z世代ネオホームレスのドキュメント】
虐待の事実も「父親からの愛情」
「実の父親から性的虐待を受けていたんです」 モカさんの実父は、母親に性的虐待を、モカさんに対しては殴る蹴るなどの暴力を振るっていたという。そんな生活が続いたあと、両親は離婚。父親に引き取られたモカさんは、これまでの殴る蹴るの暴行に加えて、性的虐待も受けるようになった。 父親からの性的虐待という過去を、取材しながらある程度は想定していたので、モカさんの告白した内容を僕は静かに受け止めた。だが、僕にとって衝撃的だったのは、彼女が辛そうな様子をほぼ見せなかったことだ。 「普通ではないと思ってたけど、これがお父さんから私への本当の愛情なんだなと思った」 モカさんは、まるで父親と遊園地に行った記憶を思い出すかのように、軽やかな表情でそう語った。幼少期から殴る蹴るなどの虐待を受けて育った彼女にとって、唯一父親が〝優しく〞接してくれた時間だったのではないだろうか。だからこそ、客観的に見れば性的虐待でしかない出来事が、彼女にとって〝父親との楽しかった思い出〞に変換されている。 そんなふうに思考を巡らせると同時に、僕は心の底から違和感を覚えずにはいられなかった。父親からの性的虐待について話すモカさんの顔には、中学生らしいあどけない表情が浮かんでいたからだ。
13歳からパパ活で生計を立てる
実父からの性的虐待という体験を、モカさんは成長するにつれて〝異常な出来事〞として認識するようになる。そして、中学1年生になった彼女は、自分が同性愛者だと気づき始めた。父親による性的虐待に加えて、モカさんは歌舞伎町に入り浸るようになってからは〝パパ活〞で生活費を稼いでいた。 〝パパ活〞とは、経済的に余裕のある成人男性といっしょに時間を過ごし、その対価として金銭を得る活動のことを指す。得られる金額は内容によって異なり、食事だけなら1万円、性行為があれば3万円など、パパ活というカジュアルで便利なパッケージの裏でさまざまな取引がなされている。 モカさんはトー横界隈の仲間たちと数人でホテルやネットカフェを泊まり歩いているが、そのたびに宿泊費として最低でも1,000円はかかる。寝る場所だけで一日1,000円、月で考えれば3万円。さらに食費や携帯料金などもかかる。こうした費用をまかなうためにモカさんはパパ活で生計を立てていた。 「(私、)男の人(に対して)は、自分の体さえあればなんとかなるんだなって思っちゃってる」 これが、モカさんが一連の経験から出した答えだった。 「そう思うから男の人を好きになれないのかな」「自分は、そういうことをされるから価値があるし、そういうことをされなかったら価値がないんだなって思う」 モカさんがパパ活を始めたのは13歳の頃。自分が同性愛者だと悟ったのも、同じく13歳の頃だった。おそらくこの時期までに、男性の〝いろいろな部分〞を見すぎてしまったことが、モカさんの恋愛観に大きな影響を与えたのだろう。念のためにはっきりと記しておくが、同性愛者であると自覚することは悪でもないし罪でもない。
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