珍しくない小惑星の地球への衝突 46億年の歴史でみると……
「小惑星○○が地球に接近!衝突の可能性あり?」 このようなニュースを最近よく耳にする方も多いのではないでしょうか。近ごろ小惑星に関するニュースが増えているのは、観測技術の発達でより小さな小惑星でも望遠鏡で見つけられるようになり、発見数が増えたからです。実は小惑星が地球に衝突するというのは、映画「アルマゲドン」のようなSFの世界に限らず、現実世界でも十分に起こりうる話です。 【画像】恐竜を絶滅させた巨大隕石の謎 最先端研究の“答え合わせ”はこれから
20世紀以降で一番大きな衝突は、1908年6月30日にロシアのツングースカ地方で起こりました。直径数十~100メートルほどの小惑星が飛来し、半径数十キロもの木々をなぎ倒すほどの大きな空中爆発が起こったのです。幸いなことに、落下地点周辺に人の居住区域はありませんでしたが、爆発の衝撃音は1000キロ先にまで響き渡り、多くの人々を恐怖へ陥れたといわれています。このような小惑星衝突に対する危機意識を多くの人に持ってほしい──その普及啓発のために、ツングースカ大爆発が起きた6月30日を「国際アステロイドデー」(小惑星の日)としようと国連が定めました。 小惑星衝突の危機から私たちの身を守る術を考えるには、まず、温故知新、小惑星衝突が地球環境に与えた過去の事例を知ることが重要です。2回に分けてこの問題を考えます。今回は、小惑星衝突が環境に与える影響について、最新の研究成果をもとに紹介していきます。
隕石は頻繁に地球に落下している?
危機意識を持とうと言われても、目の前で隕石落下を見た人はそうそういないはずで、イメージが湧きづらいものです。しかし、隕石は頻繁に地球に落下しているのです。 ここで言葉を整理しておきましょう。「小惑星」は太陽の周りを回っている天体のうち、惑星や準惑星(惑星よりも小さいけど球形を保てる天体)と認めるには小さく、さらに尾がないものを指します(尾があるものは「彗星」です)。その小惑星が大気圏で燃えて「流星」となり、そのうち燃えきらずに地表面まで落ちてきた残りものが「隕石」です。彗星が地球に衝突することもありますが、地球に衝突する可能性のある彗星の数は小惑星よりもはるかに少ないため、本記事では小惑星について触れることにします。 地球全体で毎日100トンほどの物質が宇宙から飛来してきます。これほど多いのに被害の話をほとんど聞かないのは、地表に到達する前に燃え尽きるため、そして、地球全体で人の住む場所が限られ、地面に到達しても発見される可能性が低いためです。ちなみに地表まで届く隕石の推計は年間で数十個。決して少ないとはいえない数字ですね。現在発見されている地球の近くの小惑星はおよそ1万6000個で、いつか地球に衝突する可能性のある小惑星の数はそのうちおよそ1800個です。そのほとんどが、近年になってやっと観測でとらえられるようになった、小さな小惑星です。 小惑星衝突の頻度は大きさに反比例します。例えば、直径5m程度の小惑星は、およそ1年に1回衝突する計算ですが、ツングースカ地方を襲った直径数十メートル級の小惑星は、数百年に1回衝突することになります。ということは、46億年の地球の歴史を振り返ると、もっと大きな衝突が起きていたはずです。小惑星の衝突は地球環境にどのような影響を与えてきたのでしょうか。