珍しくない小惑星の地球への衝突 46億年の歴史でみると……
多くの生命を絶滅へと追いやった6550万年前の衝突
明確に分かっているもので最大クラスの衝突は、今からおよそ6550万年前に起こりました。その記録はメキシコのユカタン半島付近に直径180キロのクレーターとして残されています。地球に飛来してきた小惑星の直径は推定10キロ。直径数十~100メートルの小惑星によるツングースカ大爆発は半径数十キロ程度の被害で済みましたが、6550万年前の衝突は地球全体に影響を及ぼしています。この時代の地層を調べると、現在のメキシコ付近に留まらず、地球のあらゆる地域で多くの生物が絶滅したこと、地球の地表にはほぼ存在しないが小惑星には普遍的に含まれるイリジウムという物質が世界的に見つかっていることが、その裏付けです。 小惑星衝突が、どのように生物の大量絶滅と結びつくのか。現在有力な「衝突の冬」仮説によると、衝突によって舞い上がったチリが地球全体を覆い、太陽からの光が届かなくなります。そうすると、地球が寒冷化し、光合成を行う植物が枯れ、食べ物を失った草食動物が減少し、その草食動物を食べる肉食動物が減少する、そのような食物連鎖の破壊が起こります(詳細は2016年12月3日掲載のこちらの記事を参照してください)。 このようにして、地球全体の生命に間接的な被害が及びました。しかし、ツングースカ大爆発と同じように、衝突地点を中心とした直接的な被害も起こったはずです。6550万年前の地層を詳しく調べると、当時高さ300mほどの大きな津波が発生したことが分かります。もし現代、同じように小惑星が海に衝突したら、衝突の冬を待つまでもなく、海岸沿いにある多くの都市が壊滅的な被害を受けると予想されます。
生命が住めるのは地球史最大の衝突のおかげ?
このように小惑星の衝突は地球全体に大きな被害をもたらします。しかし同時に、私たち地球上の生命に欠かせない恩恵をもたらしたのも、また天体衝突なのです。それは、地球で最も大きな衝突が起きたと推測される時代、すなわち地球が生まれたころの時代、つまり46億年前までさかのぼります。 惑星形成に関する最新の理論によると、地球を含む太陽系の惑星は、直径10km程度の天体同士がいくつも衝突し合って火星サイズの大きな「原始惑星」まで成長したあと、原始惑星同士がいくつも衝突しあってできました。最後の衝突の時に地球の一部がはぎ取られて、月ができたという説(ジャイアントインパクト説)が有力です。そして、その最後の衝突の角度がたまたま絶妙だったため、地軸が直立からわずかに傾いている状態になりました。この地軸の傾きこそ、重要といえます。