泥酔した女性と「性的同意」はできるのか。職場で起きた地獄の体験
「事件当時抗拒不能であったという認識はなく、同意があったと思っていたため、犯罪の故意がありません」 【写真】24歳大学院生が驚愕したフィンランド「5歳からの性教育」の中身 大阪地検の元検事正で弁護士の北川健太郎被告が、部下である女性の検事に対する準強制性交の疑いで6月25日大阪高検に逮捕された事件について、12月10日に新たに就任したという中村和洋弁護士が会見、上記のように語りました。北川被告は2018年2月から2019年11月に大阪地検のトップ・検事正を務めた関西のエリートです。初公判で性暴力を行った罪状を認め、被害者に謝りたいと言ったその言葉を一転、否定したことになりました。 翌11日には、被害を受けたという女性検事が会見を開き、時に声を震わせながら「被告人は私をどこまで愚弄するのか。検察のトップにいた人が事件から6年もの間一度たりとも被害者の苦しみを想像せず、被害者としてとても悲しく、検事としてもとても情けないです。被告人がどのように主張しようが、真実はひとつです。司法の正義を信じます」と語りました。 では性的同意とは何なのでしょうか。性暴力の構造を考察する前編では、新入社員時に週刊誌の編集部にいた筆者の実体験をお伝えしました。上司の代理で、ある名のあるジャーナリストと打ち合わせをした際、お酒をどんどん注がれ、女性は寝てネタをとるものだと言われ、さらに彼の事務所に泊まるように布団を敷かれたのです。パワーバランスの中で、「NO」を言えない場所に性暴力は起こりやすいと感じます。 後編では、筆者の体験を知り、そして女性検事の会見を見たある女性からの辛い思い出の告白をお伝えします。 編集部注:本記事には、性被害に関する具体的な描写が含まれます。閲覧にはご注意ください。
誰にも語れずにいた20年以上前のこと
苦しい思い出を告白してくれたのは、50代の女性・Bさん。中堅企業の会社員です。パンツスーツに身を包み、颯爽とした姿で、一見悩みがあるようには思えません。しかし20年以上前のことを、今まで誰にも言えずにいたと言います。 「当時誰にも言えずにいたのは、それを口にすることでより一層私が傷つくことになるであろうことが容易に想像できたからです」 Bさんはお酒が好きで、仕事の打ち上げでもワイワイ盛り上がるのも大好きだとか。明るく元気そうなBさんが誰にも言えないでいたというのはどういう体験なのでしょうか。 時は1990年代にさかのぼります。当時Bさんは広告などを作る仕事をしており、あるプロジェクトのメンバーになって撮影現場に通っていたそうです。 「撮影の現場でチームの雰囲気をあげ、スタッフのモチベーションをあげるのも私の仕事の一つです。仕事がやりやすいように、撮影現場にスタッフが好きそうな食べ物を用意するとか、根回しをするとか、細かに打ち合わせをするなどしていました」 いい形で撮影が終わったら、そのチームで食事に行き、お酒を飲むことも多く、チームはとても親しい関係になったそうです。 「仲が良くなってお互いのプライベートな話もするようになりました。私は当時、今の夫と付き合っていて、遠距離恋愛。そのことを話しても『いつ結婚するんだよ』なんて言われることもなく、気持ちよくお酒が飲めた。仕事の相手として尊重し合う、大切な関係だったんです」 筆者もBさんと同世代なので、90年代の、特に男性の多い職場の雰囲気はよくわかります。「結婚してさっさと仕事やめちまえ」「彼氏とうまくやってんのか?」なんて言われたことも多々ありました。のちに、「女性をどう扱ったらいいかわからないからこういう風に言うんだな」と思えるようになりましたが、仕事の相手としてみなされていないことに涙したこともありました。しかしBさんはその撮影チームではそういう嫌な思いをせず、とても大切なチームだと感じていたのです。