泥酔した女性と「性的同意」はできるのか。職場で起きた地獄の体験
出張先で起きた地獄の体験
ところが、チームで仕事をするようになって1年ほどしたとき、Bさんを悲しみの底に突き落とすことが起きたのです。 「チームで関西に出張をして撮影をすることになったんです。今なら撮影チーム全員で出張がけっこう難しく、一部は現地でスタッフを探さなければならないこともあるでしょうが、当時は経費も潤沢にあったし、なによりそのチームでやった仕事がとても評判がよかったので、全員で出張をすることになりました」 2泊3日の出張で、集中して仕事をしなければならない案件でした。天候にも左右されるものでしたが、幸い仕事はうまくいきます。「打ち上げしよう!」と2日目の夜はホテルで聞いた美味しい居酒屋で地元の食事に舌鼓をうったとか。「きっといいものになる」とテンションが高まり、ホテルに戻ってからもみんなで部屋飲みしようとなりました。 「私はお酒が弱くはないし、ずっと共学育ちで仲のいい男友達もいます。バイト先の仲間たちと部屋飲みをしたり、男女楽しくワイワイという経験は多くしていました。もともとモテるタイプではなくて痴漢に遭ったこともなく、飲みの席で危ない目に遭ったこともなく、酔っても楽しくなる感じ。思えば過信していたのかもしれません。さすがにちょっと飲みすぎてしまいました」 仕事の話で盛り上がりながらも、お酒を飲みすぎ、どのように自分の部屋に戻ったのかの記憶がないそうです。そして深夜、なにか異変を感じ、お酒の回っている朦朧とした頭で目をあけると、チームメンバーのC氏が、Bさんの上にのしかかっていました。
朦朧とした頭でパニックに
「えっ? と思いました。私は上の服は着ていて、でも下が全部脱がされていた。『なに』『ヤダ』『やめて!』と言いました。でもCさんは動きをとめなかった……それどころか『ずっとこうしたかった』と言って、私の足にガーターベルトをつけ、黒のストッキングをはかせて行為を続けたんです。えっ? 何? なんで? とパニックでした」 C氏はがっしりとした体格の男性で、押さえつけられてBさんは何もできなかったとか。C氏は行為のあとBさんの後ろから抱きついてきて、Bさんは泣きながら「ヤダ」「帰ってください」とようやく言ったそうです。Cさんが部屋を出るまでどれくらいだったのかはわかりませんが、とにかくそれからずっとガタガタ震えたといいます。 まだ90年代。ホテルの部屋はカードキーのタイプでないところも多い時代です。そのホテルも鍵をかけるタイプだったとか。確認する術はありませんが、酔っぱらったBさんが鍵をちゃんと閉めなかった可能性は大いにあります。 「地獄の体験でしたし、まず翌日顔を合わせなければならなかったのが恐怖でした。チェックアウトとか帰りの手配をしなければならないのは私ですから……。怖くて顔も見られなくて、『ちょっと飲みすぎて具合が悪い』と言ってごまかしました。大好きなチームが、もう恐怖のチームになってしまった。Cさんのことは許せなかったけれど、私より年上で、業界で信頼の厚いCさんが性暴力をふるったと証明する手立てがありません。それこそ仲がよかったのでお酒の勢いでやっちゃったんだね、と言われかねない。しかもそのときは結婚していたんです。だから夫に絶対ばれたくなかった。それも、誰にも言えなかった理由のひとつです。 今思い返すと、Cさんは私を好きだったのではなく、人妻をレイプするプレイを楽しんでいたのではないかと……。だって、ガーターや黒いストッキングを用意していたんですよね、出張先に」