イメージと違ったトランプ支持者、人口250人の町で見た「草の根民主主義」 アイオワ州の町長宅で開かれた共和党員集会【混沌の超大国2024 アメリカ大統領選③】
集会が始まると空気は一変した。マクナット町長は段取りを説明し「すべての候補者に敬意を払うことを忘れないで」と付け加えた。 ▽お互いを非難せず意見を尊重 集会ではまず、候補者ごとに支持者が挙手で意見を表明する。南部フロリダ州のデサンティス知事(1月21日に大統領選から撤退表明)の支持者は「彼には知事、議員、軍隊の経験がある」と豊富な経歴を列挙した。性的少数者に対する保守的な姿勢で、米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーと対立したことを念頭に「大企業とも戦える」と訴えた。 ヘイリー元国連大使の支持者は「彼女には品がある。国連や州知事の経験があるのも素晴らしい」と強調した。 党員の発言が最も多かったのはトランプ前大統領だった。「彼は外国のためでなく、米国第一であらゆる決断をしてくれる」、「11月(の本選)に勝てるのは彼だ」と支持する声が相次いだ。 集会では支持する候補とは別の候補者に対する批判は聞かれず、皆が支持候補の良さを訴えた。発言は温かく受け入れられ、尊重されていた。町長が求めた「敬意を払うこと」を実践したとみられるが、当の候補者同士が非難しあう姿とは対照的だ。
討論が終わると参加者は小さな紙に支持する候補を書き、かごで集めて集計。結果はトランプ氏23票、ヘイリー氏10票、デサンティス氏8票だった。各地区の結果は、州で取りまとめる。シルバーシティーでの結果同様、トランプ氏がアイオワ州を制する結果となった。 ▽米国に必要なのは「政治家ではなくビジネスマン」 私にとって印象的だったのは、トランプ氏の支持者がこれまでのイメージと異なったことだ。トランプ支持者と言えば2021年の議会襲撃事件で「選挙が盗まれた」と叫んだり、陰謀論勢力「Qアノン」のようにトランプ氏をあがめたりする人々が米国内でもよく報道されている。 しかし、シルバーシティーの党員集会で出会ったトランプ支持者は親切で、自分の意見を持つまっとうな大人だった。陰謀論や議会襲撃を支持する人はおらず「彼のすることの多くは好きではない。でも、今の米国に必要なのは政治家でなく、ビジネスマンなんだ」との声も聞かれた。支持者に共通していたのは既存の政治に対する強い不信感と変化への渇望だ。