Penが選んだ、2025年上半期「必見の展覧会」5選
3. 開館記念展『アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』@鳥取県立美術館【3/30~6/15】
鳥取県立博物館から美術部門が独立し、2025年3月、初の県立美術館として倉吉市にオープンする鳥取県立美術館。世界的建築家、槇文彦が率いた槇総合計画事務所の設計による美術館は、山陰最大級の寺院跡として知られる大御堂廃寺跡を臨み、陽光あふれる開放的な空間を特徴としている。また館内には5つの常設展示室と企画展示室だけでなく、3層の吹き抜けスペースの「ひろま」や、屋外での活動も可能な「創作テラス」などが整備される。 アートを地域社会にひらき、つながりを作り、確かなものとして根付かせることを目指す同館のブランドワードは「OPENNESS!(オープンネス)」。県立クラスの美術館としてはほぼ日本最後発でありながら、鳥取からアートで未来を切り開くために誕生する、いま最もホットで話題を集める美術館だ。 開館を記念して行われる『アート・オブ・ザ・リアル 時代を超える美術ー若冲からウォーホル、 リヒターへ』では、ともに鳥取県の出身である前田寛治の「写実」や、初期の辻晉堂(つじしんどう)の彫刻的リアリズムなど、鳥取県のコレクションの特性である表現における「リアル」に着目する。 江戸時代から現代まで、洋の東西を問わず、油彩画、日本画、彫刻、写真などの多様なジャンルの作品約180点を通して、何が「リアル」であるのかをめぐる美術家たちの創作の軌跡を辿っていく。2022年に同館の収蔵品として新たに購入され、県民の中で賛否の議論を起こしたアンディ・ウォーホルの『ブリロ・ボックス』もいよいよお披露目となる。
『アート・オブ・ザ・リアル時代を超える美術-若冲からウォーホル、リヒターへ-』
開催場所:鳥取県立美術館 企画展示室、コレクションギャラリー1・2 ●鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12 開催期間:2025年3月30日(日)~6月15日(日) https://tottori-moa.jp/
4. 特別展『蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児』@東京国立博物館【4/22~6/15】
江戸の吉原に生まれ、貸本業から身を起こし、一代で傑出した出版業者に成り上がった蔦重こと蔦屋重三郎(1750~1797年)。経済的な活況を帯びるものの、飢饉や火山の噴火などが続き、幕府の統制が厳しくなる時代において、社会状況の変化をつぶさに捉えた蔦重は、黄表紙や洒落本といった文芸のジャンルにおいて数々のベストセラー作品を送り出す。 また狂歌の隆盛に合わせて、狂歌師や戯作者とも親交を深めながら、武家や富裕な町人、人気役者や絵師と関わると、浮世絵師のなかでも特に名高い歌麿や写楽を見出し、プロデュースしたことでも知られている。ネットワークを縦横無尽に広げながら、さまざまな分野を結びつけた、江戸のメディア王ともいえる人物だ。 特別展『蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児』では、本のみならず、優れた作者を育て、新たな時代を作り上げた蔦重の全体像を約250点の作品にて紹介。時間を追って蔦重の出版活動をたどるほか、蔦重が発掘した歌麿や写楽をはじめとする18世紀末の浮世絵黄金期の名品を一堂に展示する。写楽のデビュー作として知られ、大首絵の傑作である《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》も見逃せない。 さらに2025年に放送される蔦重を主人公とした大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)ともタイアップ。蔦重の活躍した天明・寛政期(1781~1801年)の江戸の街を彷彿させる再現展示も行われる。人々が楽しむものを追い求め、稀代のプロデューサーであり、マーケターでもあった蔦重のバイタリティーに満ちた生き様を、江戸時代にタイムスリップした気分で味わいたい。
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