岸谷五朗『光る君へ』で初めて長生き。立派な娘を生きて見守れる嬉しさ。出家は、メイクして1時間18分で坊主に
大河ドラマ『光る君へ』は、吉高由里子さんが演じる主人公の「まひろ/紫式部」を通して、平安時代の貴族の世界、権力を握ることの意味を描くだけでなく、親と子の関係も浮き彫りにしている。 岸谷五朗さんは、まひろの父親・藤原為時として、複雑な親子の関係を見せている。和歌や漢籍に通じた為時は自分が願ったわけでもないのに、まひろに文学の才能を開花させ、その結果、歴史に残る『源氏物語』が生まれた。自分を越えていく優れた娘をもった父親の心境とは、どんなものなのだろうか? クランクアップ直前の撮影の合間にインタビューに応じた岸谷さんは、頭に被った綺麗な柄の手ぬぐいをとると坊主頭だった。余生を過ごそうとする為時は、出家していた! (構成◎しろぼしマーサ 写真提供◎NHK) 【写真】為時の出家姿は… * * * * * * * ◆「お前がおなごであってよかった」にしびれた ━━出家した藤原為時を演じるために、頭髪を剃ったのですか!? 髪を剃って坊主頭にしたように見えるでしょう。いまの技術はすごいですよ。私の頭の形をスキャンニングして、3D(三次元)プリンターで出力し、坊主の鬘(かつら)ができる。メイクをして1時間18分で坊主になれました。昔は頭の形を石膏に取って鬘(かつら)を作りました。仕上げに4時間から5時間かかりましたよ。 ━━大河ドラマ出演は4回目ですね。『琉球の風』(1993年)は徳川秀忠、『江~姫たちの戦国~』(2011年)は豊臣秀吉、『青天を衝け』(2021年)では井伊直弼を演じられました。今回の『光る君へ』で主人公の父親を演じるというのはどういう感じでしたか。 これまでの大河ドラマでの役柄は、私の周りの人がバタバタと亡くなり、それから私の死でクランクアップしていました。ところが『光る君へ』では、私は長生きです。実在の藤原為時も長生きだったそうです。 まひろの成長とともに、まひろへの父親の影響は薄くなっていきます。『源氏物語』の作者として注目されるようになり、さらに父親の存在が薄くなる。娘に影響をおよぼすような父親でなくなっても、「可愛いまひろ」という思いは同じで、生きて見守れるというのは、これまでの役とは全く違っていました。 ━━ドラマの前半では、為時はまひろに「お前がおのこであったらよかった」と言っていました。第32回では、まひろの物語を書く才能が認められ、中宮に仕えることになり、「お前がおなごであってよかった」と、為時の心境が変わりましたが。 自分でも「お前がおなごであってよかった」と台詞を言って、しびれました。まひろと親子の関係でいられること、生まれてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう、という感謝の気持ちで一杯になりました。 親のわがままを通そうとする時、子どもはそこから外れていく。その外れた時に彼女の生き方とリンクしていく。「男であればよかった」が「女であってよかった」となる脚本をお書きになった大石静先生はすごいと思いました。
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