岸谷五朗『光る君へ』で初めて長生き。立派な娘を生きて見守れる嬉しさ。出家は、メイクして1時間18分で坊主に
◆出来の悪い息子ほど可愛いもの ━━為時が、孫の賢子(南沙良さん)が藤原道長(柄本佑さん)の子どもだという出生の秘密を知ってしまった時、どう思ったのでしょうか。 『光る君へ』に出演するからには、現代に生きている自分を平安時代に置き直さなければいけませんでした。現代なら、賢子がまひろの夫の藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)の子どもではなく、藤原道長の子どもだったなら、家の中がひっくり返るような出来事です。でも平安時代なら、それは一大事ではないのでしょうね。 為時も漢文の世界にどっぷりとつかって堅物でいるようで、妾のところに行ったりしている。 当時であれば、賢子が権力者の道長の子どもであるなら、為時にも少しずるいところが出て、有利に事を運んで、良い方向に持っていこうとするところが出ると思います。 ━━第39回で為時は息子である惟規(高杉真宙さん)を亡くします。為時の腕の中で死んでしまう。惟規の辞世の歌は歴史に残っていますね。 為時の可哀そうなところは、親の後に子どもが死ぬという順番を守れなかったことです。歴史のうえでも為時は妻に若くして先立たれ、子どもにも先立たれ、その意味では、たいへんに気の毒な人だったと思います。 為時は越後に赴任するので、惟規は父親を送り届けるためについて行く。そのシーンは外の撮影で、為時と惟規は馬に乗り、お供の者たちは歩いている。 今年の夏はとても暑かった。さらに馬の上はより暑いのですよ。ずっとサウナに入っている感じでした。ドラマでは短いシーンなのですが、エキストラの人たちもスタッフの人たちも、惟規も私も猛烈な暑さで大変でした。 その後、越後の国守館に着いて、室内で為時に抱かれたまま惟規が亡くなる。惟規が初めて登場してからのシーンが、私の頭の中に浮かびました。出来の悪い息子ほど可愛いものです。とても大切なシーンだと思い、脳天気な可愛い息子が死んでいくのが、視聴者の方々にどう見えるのか?と考えました。 惟規は為時に支えられて歌を書いて死ぬのですが、最後の1文字だけが力がつきて書けなくて、為時が書いたという裏話まである重要なシーンでした。 ━━吉高由里子さんと親子の役をやってみて、どうでしたか。 吉高さんのことは、同じ事務所(アミューズ)なので、可愛らしい後輩と思っていました。あいつはいいやつだと知っていましたが、共演は初めてでした。 第2回で、初めて吉高さんの目を見て芝居をして、彼女の役者力はこれだったのかと分かり、すごいと思いました。 大河ドラマは若い俳優もベテランの俳優も緊張するのです。ところが彼女はまわりの人たちを緊張させないのです。彼女の役者としての深さはそこあると思いました。
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