ユニオン ランチのテーラードジャケット 情熱とこだわり凝縮
■ジャケットづくり、一時は存続の危機に
クリエイティブディレクターの加藤公子さんはバイヤーからデザイナーへ転身。服飾学校で服づくりの基礎を学んだものの、ブランドスタート当初は手探りで、制作を依頼する工場や職人からノウハウを教わることも多かったのだとか。 あるとき紳士服付属品の専門のメーカー「畠山商店」(東京・江戸川区)で、毛芯を使った本格的なメンズのジャケットの構造を解体して見せてもらい、そのすばらしさに感銘。早速工場も紹介してもらい、そこからジャケットづくりにのめり込み、気がつけば20年近くがたつそうです。 ジャケットは青森の工場に依頼。時代の流れで、長らく依頼していた工場との関係に思いがけない変化があり、ここ1年あまりジャケットの生産を諦めざるを得ない状況に。数軒の工場にサンプル生産を依頼するも納得する仕上がりではなく、サヴィル・ロウ仕込みの紳士服のテーラーでもトライアルしたものの、今度は人の手のぬくもりが伝わりすぎて、想定するニュアンスとも違うなど、途方に暮れる日々だったそうです。 そんななか信頼する青森のセレクトショップ「シエント」のオーナーからの口利きで、現在はほとんど新規の依頼を受けない工場「サンライン」(青森県田舎館村)が手がけてくれることになり、今春から販売が再開できることになったそうです。
■服が発するぬくもりのさじ加減まで、徹底的に吟味
工場を変えたことで、仕上がりにも微妙な変化が生じてきました。マスターパターンを基に、素材に合わせてパターンを引き直したり、縫製の個性もあったりするため、新たな工場のジャケットはこれまでよりも少し全体に柔らかく、余白がある印象なのだとか。 素材も完全オリジナルで、オーガニックのリネンとコットンを混紡。糸の強度を上げるために通常2本のところ、3本取りで、目の詰まったかっちりと硬い織りに。それを逆に使い込んだヴィンテージ風の落ち感や滑りのある風合いに仕上げています。 こだわりの生地のイメージに根気強くに協力してくれたのは、探究心あふれる麻素材専門の老舗商社「麻絲(まし)商会」(滋賀県東近江市)と、麻織物専業の機屋、加藤好君さん(静岡県磐田市)。「一見普通の生地ですが、実は難易度が高い素材。機屋の加藤さんは『できない。無理』 と言いながらも、最終的には完成させる。73歳、唯一無二の職人です」とデザイナーの加藤さんもその仕事ぶりに惚(ほ)れ込んでいます。