多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
遭難者の約8割が中高年
さらにこのところ注目される高齢者の登山。警察庁地域課の統計では平成23(2011)年に起きた全国の山岳遭難は1830件で、同年時点では前年に次ぎ過去2番目の多さ。遭難者は2204人で、うち275人が死亡・行方不明となり、けが人も800人以上。このうち40歳以上が1696人、78%と中高年が大半を占めました。さらに60歳以上の遭難者は1118人と、全体の50%、半数に上りました。平成19(2007)年から平成23年までの5年間の山岳遭難統計の分析でも、全遭難者の約50%を60歳以上が占めています。 その理由として警察庁は、最近の登山ブームを反映し、中高年層の登山の機会が増えたことや、体力の衰えで天候の急変やさまざまなトラブルへの対応能力が相対的に低下していることなどが考えられるとしています。遭難の内容別では、道迷い、滑落、転倒だけで全体の72%を占めました。 そのほか、単独登山の死者・行方不明者は154人で、全単独遭難者の20%を占め、2人以上の複数の登山者の場合の死者・行方不明者の割合8%の2・4倍。単独登山の問題点がうかがえます。
遭難は「簡単にできる」
丸山さんは「遭難は簡単にできるものなんです。ちょっとしたつまづきで行動不能から遭難につながることもある。高齢者ならなおさら頭の保護のためヘルメットを着用してほしい。またBKGにならず、道に迷ったらすぐ引き返し、迷走を避けてほしい。トラブルに対応できるよう単独登山も避ける。高山病になったらすぐ下山です」としています。 警察庁も、遭難防止に配慮すべき点として、(1)登山計画の作成、提出(気象、装備、食料、体力、体調、山岳の選び方、日程などに配慮した余裕ある安全な計画とし、複数人による登山に努める。計画書は家庭や職場、登山口のポストなどに提出する)、(2)危険個所の把握(事前によく調べる)、(3)状況の的確な判断、(4)滑落・転落防止(滑りにくい登山靴などを使用、ストックなどの装備も活用し、気を緩めず慎重な行動を)、(5)道迷いの防止(地図、コンパスなどの活用)などを挙げています。 (高越良一/ライター)
■丸山晴弘(まるやま・はるひろ) 1940年長野市生まれ。1961年以降北穂高岳滝谷ツルム正面壁、鹿島槍ケ岳荒沢奥壁ダイレクトルンゼなど初登はん。1971年、イラン最高峰ダマバンド峰(標高5671メートル)スキー初滑降。長野県山岳遭難防止対策協会講師。ニュージーランド山岳会会員。