多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
「ベテランでも遭難」冬山登山の怖さ
険しい山が多い長野県の特徴について丸山さんは「標高0~1500メートルまでを低山帯、1500~2500を亜高山帯、2500以上を高山帯として、全国の高山帯の山151座のうち約90%が長野県に集中している。長野県が日本の屋根といわれる理由です」と説明。高山帯で行動する服装、食料、水、健康管理などすべてに油断がないか謙虚に点検をと呼びかけます。 今回のような雪崩の危険について「冬山登山の場合、ベテランでも遭難することがある。雪崩を心配するならそこの地形と植生を見なければいけない」。傾斜が60度以上だとスノーシャワーが頻発するが予知や回避でかえって危険度は低く、問題は傾斜が30~60度の斜面。斜面の横から平行して吹く風、尾根上に雪庇(せっぴ)のつく風下斜面、風上斜面の順に危ない。多量の降水、気温の上昇にも注意。そして樹高2~3メートルの低木は雪の下に倒れるようになると積もった雪の移動を促進するので、植生に注目しなければならないと言います。 また「白馬岳周辺の場合は冬期間に限り世界4大最悪気象地域の一つになる」と丸山さん。白馬三山あたりから北部の剣岳を含む地域では1週間にわたり吹雪が続くことも。北米カスケード山脈、南アメリカ・パタゴニア、ニュージーランドのサザンアルプスと並んで厳しい海洋性気候にさらされることを知ってほしいと言います。登山の安全と気象は切り離せず、地図や天気図を「読む」力も問われます。 登山のペースについては「普通の中高年で登れる標高差は1時間に250メートル。山の実際の標高差を考えながら登ってほしい」。例えば新潟県の妙高山は標高2400メートル余で高山とはいえないが、登山口の標高が低いため標高差は1400メートル前後にもなり、実質的に高山だと構えていくべきだと言います。 平成11(1999)年に長野県内の春山で60代の男女4人が凍死したケースでは、悪天候の中、食料、衣料、傘、水などの重要な装備を「荷を軽くするため」と途中に置いていったとみられています。「登山を支える食料、装備を置いていかなければならない程度の体力の登山なら、はなから山の選定を間違っていた典型的な『入山前遭難』といえます」と丸山さん。