多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
「入山前遭難」と「BKG」
地元長野市の登山家で遭難対策にも携わる丸山晴弘さん(長野県山岳遭難防止対策協会講師)は「自宅で登山などの計画を立てている時からすでに遭難が始まっていることがある」と指摘。警鐘を鳴らすため、先に「遭難のしかた教えます」(山と渓谷社)というドッキリするタイトルの本を出版しました。 登山の計画段階ですでに遭難の危険をはらんでいる状態を丸山さんは「入山前遭難」と名付けています。「まず現地のことを知ろうとしないのが問題」。「大事なのは緯度。北海道の2000メートル級の山は長野県なら3000メートル級の山と考えないと」。標高が100メートル上がるごとに0・6度気温が下がるといった基本知識に基づいた装備の用意も大切。夏でも汗の乾きにくい綿のTシャツ1枚で2000メートル級の山に行くなどはもっての外と。 「AKBならぬ『BKG』が入山前遭難につながりやすい3要素」と丸山さん。「『B』は目的の山のことを勉強しようとせず自分の命を大切にしないバカな人のこと」。標高3180メートルの槍ケ岳にバスで行こうとした登山者もいるとのこと。上高地の河童橋で近くのホテルの支配人から「槍ケ岳行きのバスはどこから出ているのかと中年の登山者に聞かれた」と以前に聞いた丸山さん。「これでは遭難が減るわけがありません」。 「次の『K』はケチ。せっかく山に来たのだからと無理して行動する。遭難の始まりです」。やっと取れた休暇、遠くから新幹線まで使って駆けつけた山。天候が少し悪いから、体調がすぐれないからといって登山をあきらめる訳にはいかないと突き進む。スキー場では「新雪で滑りたい」とゲレンデから飛び出してコース外に突入する。 『G』は「ガンコです」。何がなんでも踏破したい。「昔取った杵柄」の意識十分で、若いときに歩けたから大丈夫と、ガイドブックのコースタイムそのままに行こうとする中高年に多いタイプ。その意識と実際の力のギャップが怖いと言います。