考察『光る君へ』20話 中宮(高畑充希)が髪を切り落とした重大な意味、ききょう(ファーストサマーウイカ)の衝撃はいかばかりか
まひろの代筆で!
為時の若き日の話で盛り上がる宣孝(佐々木蔵之介)とまひろを見ると、このふたりの相性自体は悪くなさそうなのだよな……と思える。その様子を、酒に酔って寝たふりをしつつ為時も見ている。 そして除目のあとに任地が変更されることもあると宣孝から聞き、一計を案じるまひろ。 レビュー第19回で触れた、為時が帝に奏上したという詩がまひろの代筆で! 為時は漢文の素養があります、宋人とのやり取りもできます。というアピールだ。 そして、ふたりが交わした恋文の漢詩を道長が大切にとっておいたがゆえに 「これはまひろだ」とわかるという……。
破格のランクアップ
まひろと道長により、為時は淡路守から越前守に国替え。国司の任地は大国・上国・中国・下国の等級に分けられていたことは、第18回レビューで述べた。下国の淡路国から、大国の越前国の国司に破格のランクアップである。『今昔物語集』や『古事談』などでは為時が自分から願い出たのだが、ドラマでは自分では何もしていないのに突然こんなことになるのだから、そりゃ驚く。当然、こんな大胆なことをやりそうな娘に問う。 娘の才能だけではない、右大臣・道長の力がなければこうはならない。道長とまひろの関係は並々ならぬものだと考えて、真正面から話を聞く場面がよかった。 「父はもうお前の生き方をとやかくは申さぬ。道長様とお前のことは、堅物のわしには計り知れぬことなのであろう」 自分は堅物だからという言葉に、ちょっと笑ってしまったが、為時の人柄を十分に視聴者に伝えて越前編に移ってゆく展開がよい。
呪符を仕込んだのは……
女院・詮子の体調不良。倫子(黒木華)が女院の看病をしていて、なにかおかしいと気づく。そして、女房達に命じて屋敷の隅々まで調べさせた結果、呪符が山ほど出てきた……いつ、誰がこんなにというくらいに。 倫子から事の次第を聞いた道長は驚くが、 「わたくしにおあずけくださいませ」 という妻の言葉と微笑みから、誰がやったのかを察し、落ち着いて頷く。 そう。呪符をあちらこちらに仕込んだのは、おそらく詮子自身だ。 仮病で臥せって政敵を陥れる。これは父・兼家(段田安則)のやり方そのままである。そして、香炉だの文箱だの、碁石の中だの。女房が頻繁に蓋を開けるやろ、開けたら即バレるやろというところに仕込まれているのは、さすがにやり過ぎである。この大袈裟でやり過ぎなところが、詮子らしいと思うのだ。 「そなたの妻(倫子)は口が軽いのう」と言っていたので、倫子が呪詛のことを道長に話すのを期待したのだろう。 それに気づいた倫子は伊周と隆家を政治的に追い落とす気はない道長の意を汲み、おおごとにならぬよう計らったのだった。 ところで、これみよがしにたっぷり仕込まれた女院の部屋の中のものと違って、床下にそっと置かれた呪符入りの壺。あれだけは詮子が知らないものだったら、ちょっと怖いですね。