考察『光る君へ』20話 中宮(高畑充希)が髪を切り落とした重大な意味、ききょう(ファーストサマーウイカ)の衝撃はいかばかりか
一条天皇激怒の当然
事件を知った一条天皇(塩野瑛久)の激怒。 「高貴な者の従者たちの乱暴を禁ずる旨、厳命したばかりだと言うのに」 この前の年、長徳元年(995年)7月に七条大路で隆家の従者と道長の従者が合戦に及ぶ事件、8月にも隆家の従者が道長の随身を殺害する事件が起こっている。道長と中関白家兄弟の政治的緊張は、その従者たちに波及し、文字通り場外乱闘となっていた。 その5か月後に、伊周と隆家が今度は花山院に暴行を仕掛けたのである。帝が烈火のごとくお怒りになるのは当然なのだ。 一条天皇「中宮は身内の者に一切会うべからず」 中宮・定子(高畑充希)が帝に取りなしてくれるはず、という貴子(板谷由夏)の読みは見事に外れた。
源典侍のモデル
まひろ(吉高由里子)の父・為時(岸谷五朗)が淡路守に任官。苦節十年、よく辛抱したと思う。世間からは花山帝の寵臣と目され、兼家(段田安則)には睨まれ。そんな年月でも、ただ自分の学問を世のために活かしたいと願い、申文を朝廷に送り続けた。 そんな為時の努力とは正反対のやり方で越前守の任官を得た、源国盛(森田甘路)。母親のコネにより、女院・詮子(吉田羊)の推挙で……というドラマ上の設定。 詮子「あんなうつけとは思わなかったのよ。母親は聡明な人なのに」 台詞でサラッと源国盛の母について触れていた。国盛の母は不祥だが、父・源信明の妻のひとりに、典侍(ないしのすけ)紀頼子がいる。そして、紀頼子が源信明との間にもうけた女子が源明子(※道長の妻とは別人)。のちに母と同じく宮仕をして、源典侍と呼ばれる。『源氏物語』、漫画『あさきゆめみし』ファンにはピンとくるだろう。若き日の光源氏と頭中将、貴公子ふたりと恋愛を楽しむ年配の女性……源典侍のモデルとされる女性である。このドラマ内で、国盛の母が紀頼子ならば、女官である典侍と女院・詮子が旧知の仲というのも納得だし、このポヤーンとした国盛と源典侍が同父同母兄妹ということになる。 ちょっと楽しい想像が広がる台詞だ。 それはそうと、伊周と隆家に厳しい処罰は求めないという道長に不満そうな詮子……。 なにかやらかす予感がする。