世界で最も売れたバイク 疾走し続けるスーパーカブ
各国で進化、発展
C100の誕生から59年後の2017年10月、スーパーカブ・シリーズの世界生産累計が1億台に達した。単一シリーズとしては世界一であり、現在は1億1000万台を突破している。
スーパーカブは各国のニーズに合わせたさまざまなバリエーションが存在し、例えば日本では1961年という早い段階でC100の新聞配達仕様を国内ショーで公開。また、同年にアメリカではオフロード走行を考慮した「CA100Tトレール50」を発売している。
95年には、モダンでスタイリッシュなデザインの「WAVE」がタイで登場。これは東南アジア全域だけでなく、南米でも大ヒットする。ブラジルでは、手荷物を抱えてバイクに乗るのは格好悪いとの理由から、シートの下に大きな収納スペースを持つ「Bizシリーズ」が98年に誕生した。こちらも南米エリアのスタンダードモデルへと成長している。
日本では2025年11月から始まる排ガス規制の強化に伴い、排気量50cc以下の原付きバイクは生産できなくなる。ホンダは24年12月に限定の「最終モデル」を発売し、25年5月をメドに生産を終える。110ccモデルは引き続き生産、販売を続けるため、スーパーカブの歴史がここで途絶えるわけではない。気軽に乗れて、便利かつ経済的、しかも堅牢で壊れにくい。世界の街中でスーパーカブを見かけたら、「あれも1億1000万台の内の1台だ」と思いを巡らせてはいかがだろう。
【Profile】
大屋 雄一 モーターサイクル・自転車ジャーナリスト。短大卒業後、二輪専門雑誌の出版社で定期刊行物やムック本の取材および編集業務を経験した後、フリーランスに。モーターサイクルや自転車のニューモデル試乗記を1500本以上執筆し、車両メーカーと深い信頼関係を築いている。キャンプツーリングも趣味とし、アウトドア系の装備に造詣が深い。