“まんがの集英社”の総力を結集! 22年ぶりにリニューアルした『学習まんが 世界の歴史』のポイントは?【編集者インタビュー】
“まんがの集英社“の総力を結集
――ちなみに私自身の大学受験は日本史選択で、世界史は中学校のテスト勉強くらいしたしたことがないのであまりよくわかっていなくて。それが今回「世界の歴史」を読ませていただいて、改めて月並みな感想ですが「歴史って面白いんだな」と感じました。 加藤さん:そう思っていただけるのが一番嬉しいです。世界史の勉強って、「教科書読んだらわかるから」みたいに言われたことがある人が多いと思うんですよね。もちろん教科書には間違ったことは書いていないし端的にまとめられているのですが、では読んだら頭に入ってくるかとなると難しいんじゃないかと思います。 でも学習まんがだったら、主人公の想いだったり、ドラマだったりがある。もちろん脚色している部分はありますが、教科書の行間をうまくドラマにしているのが学習まんがなんですよ。また最近では山﨑先生の書籍も多くの人に読まれていますし、世界の歴史を大人が学び直すという需要もかなりあると思います。そういった方にも対応できるシリーズになっている自負はありますね。 ――世界の歴史を題材にした学習まんがは他社からも出版されていると思うのですが、その中で集英社版の強みはどこですか? 加藤さん:やはりまんがとして面白いところだと思います。私自身他社さんの「世界の歴史」も読ませていただいて、それぞれ工夫されていて面白いなと思うのですが、我々は全18巻の流れをすごく考えて作りました。縦と横という言葉が歴史教育ではよく使われるのですが、それぞれの巻に横の目線を必ず入れつつも、全部のストーリーを考えた時に、人類何千年の歴史が縦軸として繋がっていくようにというのは意識しました。 ――「週刊少年ジャンプ」「りぼん」と人気まんが誌が多くある集英社の強みが活かされているんですね。 加藤さん:そうですね。編集部員の多くがまんが誌で作家さんと組んでまんが編集をしていた人間なので、その経験が活きていると思います。 とはいえいわゆるまんが誌に連載されているまんがと比べて、学習まんがは監修や校閲も重要なので、まんが家さんが自分なりの創作として描かれている部分にも修正をお願いすることも多く、制作過程で違いがあるんです。そんな中で、脚本家の方も、まんが家さんも「この人は」と思った方にお声がけさせていただいたり、弊社で学習まんがを多く描かれている方にご協力いただいてこちらが勉強させていただいたり。集英社のまんがの力を結集できたと思います。 ――今回各巻の表紙は人気まんが家の方が手がけていますよね。 加藤さん:弊社としては2007年のナツイチ(集英社文庫の夏のフェア)から人気まんが家の方にカバーを描いていただいて、それをフックに多くの方に興味を持ってもらうという方法を始めていました。2016年の『日本の歴史』も大きな反響がありました。今回も各雑誌の編集部と相談して、割と早い段階から進めていた企画でした。どの先生にどの巻の表紙をお願いするかという会議はやっぱり楽しかったですね(笑)。中でもナポレオンを荒木(飛呂彦)先生に描いていただこうというのは早い段階から決まっていた記憶があります。SNSでも話題になりましたし、これをきっかけに興味を持っていただいた方も多いと思います。 ――個人的に「ここに注目してほしい」というポイントはありますか? 加藤さん:実は今回の『世界の歴史』は2002年版より総巻数は減っていますが、総ページ数は増えているんですよ。その結果、前回の「世界の歴史」で描かれていた出来事に加えて、およそ1章分に相当するエピソードを各巻で足せたというのは大きいです。 例えば第一次世界大戦の第13巻なのですが、だいたいこういう歴史まんがだと第一次世界大戦とロシア革命を描いた上で、「ドイツが賠償金をたくさん背負わされました。ドイツは恨みを募らせて、それが第二次世界大戦に繋がっていくのです」みたいな感じの終わり方をするんですよ。でも今回は、「第一次世界大戦でイギリスとフランスが山分けすると言っていた中東では何が起きたでしょうか」という章を入れたんです。実際ここにはオスマン帝国があったんですけれども、そこに「アラブ人の国を作っていいよ」と「ユダヤ人の国を作っていいよ」と「イギリスとフランスで山分けするよ」という三つの約束が重複してしまったんですね。ここは今でも問題が続いている部分でもあるのでそのエピソードを入れられたのがよかったなと思います。 ――歴史をよく知る人にとっても読みごたえがありそうですね。 加藤さん:今言ったエピソードは2017年に『アラビアの女王 愛と宿命の日々』というタイトルでニコール・キッドマン主演の映画の中にも出てくるんですよ。そういう風に以前は目を向けてこられなかった歴史がエンターテインメントの世界で注目を集めていて、世界の歴史自体は同じようでも着眼点は変わっていっているんですよね。そういった意味でも本書は世界の見え方をもう一度整理する手助けになると思うので、家族で楽しめると思います。ぜひ多くの方に手に取っていただきたいですね。
取材・文=原智香、撮影=金澤正平
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