“まんがの集英社”の総力を結集! 22年ぶりにリニューアルした『学習まんが 世界の歴史』のポイントは?【編集者インタビュー】
他にも各章の最初にメッセージ系アプリのチャット欄のようなものを入れて、各章の内容をまとめています。「これ何の話だっけ?」となった時に、このチャット欄に戻ると頭が整理される。そんな道標になればと思って作りました。同じく各巻の最初には「この巻の舞台」という地図を入れ、舞台となる場所の位置や地形をまとめています。
“勉強”になる前に読むことで、子どもの世界の見え方が変わる
――私自身、世界史は位置関係がわからず挫折してしまった過去があるので、この地図はとてもわかりやすかったです。主な読者は子どもたちだと思うのですが、どのタイミングで読むのがオススメ、というのはあったりしますか? 加藤さん:個人的な意見になりますが、小学校を卒業した春休みに読んでいただいて、これから始まる世界史にちょっとでも興味を持ってもらえればいいなと思っています。でももちろんそれより前に世界史に触れたいと思っている探求心のあるお子さんにはそのタイミングで読んでほしいので、漢字に読みがなを振っています。 ――わが子は小学校低学年ですがまんがが大好きで。まんがだったらなんでも読むので、そっとリビングに置いて「世界史を勉強しなきゃ」と身構える前に手に取ってみてほしいなという思いがあります。 加藤さん:良くも悪くも歴史上で起こっていることって、どの国でも同じことだったりしますよね。誰かが戦って、国が滅びて。『世界の歴史』1巻から18巻まで読んでもらえると、それがいろんな時代にいろんな場所で起きて今の世界に繋がっているんだということがわかるわけです。そうなると世界の見え方が変わってくるんじゃないのかなと思うんですよね。その時は「まんががあるな」くらいの軽いきっかけで読んでもらって、読む中で勉強という意味合いだけではなく、お子様の世界観みたいなものが育まれていくといいなと思っています。 ――なるほど。一方でこの22年の間に特に首都圏での中学受験熱はかなり高まったと思うのですが、そのあたりを意識したこともありますか? 加藤さん:私自身も中学受験経験のある子どもがいるのですが、基本的に中学受験は日本史がメインですよね。なので弊社の学習まんが『日本の歴史』の方が中学受験に関してはよりふさわしいのかなと思います。ただ中学受験に時事問題は出題されますよね。そのための参考書ではこの1~2年に世界で起きた出来事が紹介されていると思うのですが、それらの背景が『世界の歴史』16~18巻を読むと見えてくるんです。例えば「どうして今イスラエルがこんなことになっているのか?」という疑問もこのあたりを読むと見えてきます。その意味では16巻以降の近現代から読んでいただくのもひとつかなと思います。 ――特に18巻は子どもたちが主人公になっているので、共感しながら読み進められそうですよね。 加藤さん:ちなみに、近現代の巻は2巻分増やしたんですよ。2002年版の「世界の歴史」では第二次世界大戦後の分量は2巻だったので、今回も当初はそのイメージを思い描いていたのですが、制作していくうちに「これでは説明しきれていないのでは」という意見が編集部からも山﨑先生からも上がって。先にお話しした植民地各国の独立についての話を入れ込むにしてもそうですし、ベトナム戦争後の歴史って、我々30、40代の作り手の認識からすると自分が生まれてから起きているので、なんとなく知識があるんですよね。でも読者として想定されている世代からすると、生まれる前のことなわけです。そこに気づいて巻数を増やしたことで、特に現代の歴史はかなりかみ砕いて入れられたんじゃないかなと思います。 ――確かに読み手の視点で考えたらそうなりますね。内容はどうやって決定したんですか? 加藤さん:18巻は全5章ですが、最後の章はギリギリまで内容を決めずにとっておきました。最終的にはコロナ禍が収束しつつあるタイミングで内容が決定したのですが、発売時期があと1年早ければコロナ禍で終わっていたかもしれません。最後の章では各国の子どもたちがこれからの世界について話し合うストーリーで、未来への希望を含みつつ終わることができたので、結果良かったなと思っています。
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