老親のお金問題 どう分け合う? 仲が悪い兄妹の橋渡し役と、後日届いた非情の通達
いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。再び、母の住まい探しが始まりました。今回見学したのは、小規模多機能型居宅介護が併設されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。 【本編】画像を見る あま子さんちの家族構成
早いもので、この連載が始まって約1年がたちます。読んでくださっている方から「お母さんの住まい、まだ見つからないの?」と心配していただくことが増えました。芸人の決め台詞(ぜりふ)風に言うと「安心してください、入ってますよ」。話の中ではいまだ迷走していますが、現実世界では、よいホームが見つかり、母は穏やかに暮らしています。 ただ、そこにいたるまでは本当に紆余(うよ)曲折があって、「こんなマンガみたいなことある?」というような大どんでん返しもありました。「親の終の住まい探し」は初めての連続。戸惑い、空回り、迷走しまくった私の体験が、これから親の住まいを探す人にとって、暗闇を照らす小さな明かりになればうれしいです。
親の介護に避けて通れないお金の話
さて、今回は、母の住まい探しにあたり、私が一番つらかったことをお話しします。それは、ズバリ「姉兄とのお金の話」。 母から銀行や郵便局の通帳記帳を頼まれることの多かった私は、母のおおよその貯金額を把握していました。私が中学生の時に父が亡くなって以降、女手一つで3人の子を育て、大学や専門学校に通わせた母。蓄えがわずかなのは無理のないことと私は思っています。介護費用は、本人のお金でまかなうのが原則ですが、母の場合、年金と貯金の取り崩しだけでまかなうのは難しい。そうした現実を知ってもらおうと、まずは、母の貯金額を姉兄に知らせることにしました。 よく介護の本なんかに書いてあるじゃないですか。『介護に直接関わらない兄弟は、お金を多めに出すなどして、兄弟間に不平等のないようにしましょう』って。 ◎理想→「お母ちゃんの世話はあま子(私のこと)がキーパーソンでやってくれるんやから、私らは多めに援助するよ」と姉兄から申し出てくれる。 ▼現実→姉兄それぞれに、支援をお願いするが、双方から断られる。 姉兄との話し合いで、キレそうになったことは何度かありました。でもガマンした。“戦争”をおこすのは簡単だけど、目的を果たすには粘り強い“外交”が大切だと、これまでの経験で学んでいたからです。 兄との交渉が成功した理由は、夫の存在でした。交渉の場に夫が参加することで、いつも頭ごなしに会話をぶち切る兄が、比較的冷静な態度で話し合いに応じたのです。私からだと聞く耳をもたない提案も、夫が代わりに話してくれたことで、受け入れてもらえました。夫よ、本当にありがとう。 一方、姉はと言うと「ツヨシ(兄)に出してもらえ」の一点張りでした。母がマンション暮らしをしている頃は、近くで暮らす姉と私で世話をしており、首都圏に住む兄はほぼノータッチ。なので、姉の気持ちもわかるのです。正直、姉からの援助はあきらめていました。 ある日のことです。私が母のマンションで、片づけをしていたところへ、姉がやってきました。お茶を飲みながら、母の荷物の処分に困っていることや、住まい探しが難航していること、母の現状などを話しました。すると姉が唐突に「母の支援をしてもよい」と言い出したのです。兄や母に思うところはあるものの、妹の私にすべてを負わせるのは不憫(ふびん)だと思ってくれたのかもしれません。こうして介護費用の不足分は3人で分担することが決定し、私は心底ホッとしたのでした。