地方ほど「不便だから」で運転継続…“人生100年時代”高齢ドライバーの事情と現状 必要な1人1人の選択
高齢ドライバーによる事故が増える中、運転免許の自主返納のあり方が問われている。生活や家族のために免許を手放せない事情もある中、返納時期を年齢で区切るような“一律のルール”ではなく、個人にあわせた選択肢を用意する取り組みが始まっている。また、返納をめぐって話し合いを重ねる家族の姿も追った。 【画像で見る】地方ほど「不便だから」で運転継続…“人生100年時代”高齢ドライバーの事情と現状 必要な1人1人の選択
■2023年は384件…増加傾向の高齢ドライバーの死亡事故
名古屋市天白区にある愛知県警の運転免許試験場で行われているのは、免許更新を希望する75歳以上の人に義務化されている「認知機能検査」だ。 検査では、16種類のイラストを4分間で記憶するテストがある。それぞれのマスにどんなイラストがあったのかを記入する。正解すれば1問につき配点は2点で、ヒントありで正解したら1点となる。 他のテストも含めて一定の点数を下回ると、「認知症の恐れあり」と判定され、医師から正式に診断されれば、「運転免許取り消し」となる。 警察庁によると、2023年に起きた75歳以上のドライバーによる交通死亡事故は384件だ。 2020年から増加傾向をたどり、「運転免許の自主返納」は度々議論に上がっている。
■「逆走」に「一時停止無視」 講習でミス相次ぐ実情
岐阜県岐阜市の三田洞(みたほら)自動車学校では、定期的に70歳以上のシニアを対象にした「高齢者講習」を開いている。 多くの高齢者が講習に参加するが、一筋縄ではいかないのが実情だ。 75歳の男性は、熟年のドライビングテクニックで一見スムーズに運転しているように見えるが、「クランク」で曲がりきれず、指導員に止められてしまった。 指導員: ちょっと無理やねぇ。このまま行ったらぶつかる。ちょっとバックしてください。 74歳の女性は、気が付かない間にセンターラインを越え、逆走していた。 指導員: ストップ、ストップ。センターラインこっちで逆走。こっち行かないとあかん。これは大変だ。 女性(74): すみません。 さらに、一時停止も見落としてしまった。 女性(74): すごく肝に銘じました。“止まれ”というところを2カ所も私は見逃したそうですので。そこまで見てなかった。 受講者からは、「車がないと生活できない」という本音も聞こえてきた。 男性(80): (Q免許返納を考えたことは?)考えたことないよ。東京ならともかくとして、岐阜は車がないとだめでしょうね。 こうした実情は、地方ほど色濃くなる。内閣府の調査では、免許返納で「不便を感じる」と答えた人の割合は、地方に行くほど高い割合となった。「買い物」や「通院」がしにくいといった、生活の悩みが大半を占める。 代わりの足となる路線バスは、2022年度までの15年間で2万キロ以上が廃止された。 高齢者による運転免許の自主返納は、池袋での暴走事故があった2019年をピークに減少傾向にある。