くつろぎの温泉三昧、文豪も愛した湯と文化財の宿 静岡県・修善寺温泉「新井旅館」
【連載】楽しいひとり温泉
温泉旅館の醍醐(だいご)味は大浴場にあり、と思う温泉があります。一方、部屋専用の温泉や貸し切り風呂でプライベートな時間を持てるのもリラックスできます。今回ご紹介する修善寺温泉・新井旅館は、館内に温泉がたくさんあって、どちらの願いもかなえてくれる温泉三昧(ざんまい)の宿です。中でも必見は「天平大浴堂」の天平風呂。荘厳な雰囲気漂う湯殿の大きな湯船に身を沈めて、美しい温泉建築の空間を見上げると、温泉旅館はこうでなくちゃ、と感激することでしょう。 【画像】もっと写真を見る(17枚) ■連載「楽しいひとり温泉」は、国内外の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する筆者が、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。
進化しながら時を重ねる文化財の宿
新井旅館は1872年創業、明治、大正、昭和とそれぞれの時代に木造建築の棟を増やしながら152年の歴史を重ねてきました。ニシキゴイが泳ぐ池の周りに点在する16棟の建物のうち15棟が国登録有形文化財です。 風格あるフロントロビーは、修善寺ゆかりの日本画家・川端龍子(りゅうし)の設計で「明月荘あらゐ」の扁額(へんがく)が迎えてくれます。その隣には、横山大観が滞在した際に書いた「腰忘帯」の3文字。腰に帯をするのを忘れるくらいくつろげるという意味だそうですが、まさに、それほど心身を緩められるほどに、温泉三昧しながら過ごせます。 筆者にとって、子供のころに家族で泊まった面影が残る玄関、太鼓橋や渡り廊下など、楽しかった旅の思い出がよみがえってきます。2018年から2024年と館内のリニューアルを重ねており、滞在してみると、雰囲気を残しながらも時代に合わせて進化していました。
泊まり方が選べるひとり宿泊プラン
ひとり宿泊ができるプランも多彩で、雰囲気や予算で好みの部屋を選んで予約することができます。また、リーズナブルにひとり宿泊したい時は「部屋おまかせ」や食事処のプランで。どんな部屋に泊まれるかというのも楽しみになります。 花の棟の部屋は、竹林と赤い橋を眺めて過ごせるのが魅力。ミシュランが発行した観光ガイドブック、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星の景観にもなっている修善寺温泉を象徴する風景です。