「無限に申し込みができる」自治体のプレミアム付商品券を不正利用する転売ヤーの手口とは
不正利用で得た利益の総額は
Sが商品券の不正取得の方法を知ったのは、転売ヤーが集うLINEのオープンチャット上の書き込みだった。商品券の使い道として情報交換されていたのは、同じ自治体にある家電量販店での転売目的のスマホ購入だった。Sは、それをアウトドア商品に転用したのである。同自治体では年に2回、プレミアム付商品券が発行されていた。Sが最初に購入に踏み切ったのは、2022年の夏。約50人分の偽名と偽住所を、公式サイトに淡々と打ち込んでいった。 「住民票を確認されたら一巻の終わり」 「同じIPアドレスから多数の応募があれば不正を疑われるかも」 そんな不安も頭をよぎった。しかし結果的にそれも杞憂に終わる。不正申し込みから2ヶ月後、30人分の当選通知が、登録していたそれぞれのメールアドレスに届いたのだ。 一人当たりの購入限度額は3万円。プレミアム率分と合わせ、108万円分にあたる商品券の購入権を獲得できたのだ。 ただ、さすがにその全額分を購入するのをSは躊躇した。アウトレットコーナーにどんな商品が並ぶかは予め知ることはできない。しかも商品券には有効期限が設けられており、それを過ぎると無価値になってしまうのだ。期限内に108万円使いきれるか分からず、リスクが高いと考えた。 そこでSは10人分に当たる30万円分だけ購入することにした。プレミアム率分は6万円、つまり計36万円分の商品券になる。その程度なら、もしアウトレットコーナーにめぼしい商品がなくても、余った商品券はLINEのオープンチャットで交わされたように、家電量販店でスマホの購入にあてて転売すれば、現金化できるはずだと思った。 当時まだ学生だった彼は、購入金額の30万円のうち与信枠ギリギリの20万円をクレジットカードで、残りをコンビニ決済で支払った。結果的に、額面36万円分の商品券は有効期限内にアウトドアショップで使い切ることができた。終わってみれば、商品券購入の30万円と株主優待券5枚購入の約1万円、計31万円という元手は、43万円になって返ってきた。 「もっと商品券を買っておくべきだった」と後悔したSは、それ以降の商品券発行時には、50万円以上分の商品券を購入するようになった。