テスラより「自動運転技術」は上…!日本進出を図るウェイモ(グーグル)のロボ・タクシー「驚異の技術力」と、それでも払拭できない「懸念」
不慮の事故を受けてGMクルーズが脱落
その矢先となる2023年10月2日の夜、GMクルーズのロボ・タクシーがサンフランシスコ市内で深刻な人身事故を引き起こした。 この事故には同社にとって不運な要素があった。最初、別のクルマにはねられた歩行者(女性)がその衝撃で路上に投げ出され、その身体を折悪しく通りかかったクルーズのロボ・タクシーがひいてしまったのだ。この被害者の身体をロボ・タクシーは6メートルほど引きずって移動した後、路肩に停車した。被害者は重傷を負った。 事故捜査に当たった警察に、GMクルーズはロボ・タクシーの車載カメラで撮影されたビデオを提供した。ところが当初提供されたビデオには、このタクシーが被害者を約6メートルひきずって移動する様子を撮影した映像が抜け落ちていた。どのような意図があったのかは分からないが、一種の隠蔽工作と見られても仕方がない。 これが警察ばかりか規制当局の心証を決定的に悪くした。カリフォルニア州のD.M.V.(Department of Motor Vehicles:陸運局)はGMクルーズにロボ・タクシーのサービス停止を命じ、これに従って同社は同年10月24日にサンフランシスコ市内でのロボ・タクシーの運行を停止した。 さらに「他の州で走行しているロボ・タクシーも危ないのではないか」という懸念を受けて、2日後の26日にはテキサス州など他の地域における運行も全て停止した。 運航停止の期間中、GMクルーズはロボ・タクシーとそれに搭載された自動運転システムの修正に追われた。(前述の)「他の車にひかれた歩行者が路上に投げだされる」などの非常事態でも、ロボ・タクシーが事故を回避して安全に走行できるようにするためのソフトウエアのアップデートを実施したとされる。 一方で連邦政府やカリフォルニア州の規制当局と協議を進め、それらの許可を得て、前述の事故から1年余りが経過した2024年11月、GMクルーズはサンフランシスコ市内で自動運転タクシーの運行を再開した。しかし、それらの車両はドライバー(人間)が不要の完全無人タクシー、つまりロボ・タクシーではなく、万一の事態に備えて運転席に予備ドライバーが待機する、かつての自動運転タクシーであった。 ここからGMクルーズはロボ・タクシーつまり完全無人運転の再開を目指しつつ、段階的に自動運転タクシーの運用エリアや時間帯を拡大する計画と見られた。ところが翌12月、親会社のGMが突如事業戦略を見直し、GMクルーズへの資金投入を中止した。これを受け、同社が再開したばかりの自動運転タクシーのサービスも中止された。 またGMは傘下企業(GMクルーズ)が進める自動運転タクシー事業からの撤退を公式に発表した。今後はGMが発売する一般の市販車に、これまで自動運転タクシーの開発・運行過程で培った各種の運転支援技術などを搭載していく。これと同時に将来的な自動運転車の実現も視野に入れた開発を続行するという。