テスラより「自動運転技術」は上…!日本進出を図るウェイモ(グーグル)のロボ・タクシー「驚異の技術力」と、それでも払拭できない「懸念」
自動運転車には一件の重大事故も許されない
それにしても一旦、自動運転タクシーの運行を再開したGMがその一月後にはGMクルーズのサービス中止と自動運転タクシー事業からの撤退を発表したのは奇妙でもある。突然の方針転換に至る経緯や内情は明らかにされていないが、米国の専門家の間では競合するウェイモ、つまりグーグルとの彼我の差がGM首脳陣に撤退を決断させる主な要因になったと見られている。 今後、自動運転タクシーの技術開発・運行には年間で数億ドル(数百億円)~10億ドル(1500億円)以上のコストがのしかかってくる可能性がある。企業価値(株式時価総額)が約2.4兆ドル(現在の為替レートで約380兆円)に達するグーグルには痛くも痒くもない出費だが、同550億ドル(約8兆6000億円)のGMにとっては重い負担である。 また自動運転の中枢技術となるAI(人工知能)やクラウドなどの高度技術でも、GMはグーグルよりも明らかに見劣りがする。これらの不安要因を総合的に勘案して、GMは自動運転タクシー事業からの撤退を決めたと見られている。 一方、ウェイモ、つまりグーグルの自動運転タクシーも実は安泰というわけではない。確かに、同社はAIやクラウドなどの基盤技術ではGMクルーズをはじめ他社の追随を許さないレベルに達している。が、それでも軽度の交通事故やトラブルは引き起こしており、それらがいつか重大な死傷事故につながる恐れはぬぐい切れない。 万一、そうした致命的な事故が起きれば、かつてのテスラやウーバー、そして最近のGMクルーズに向けられた社会的な非難や訴訟、規制当局などの厳しい制裁措置が今度はウェイモ(グーグル)に向かって襲いかかる懸念は残されている。 これは合理的に考えれば不公平な処遇である。なぜなら巷の路上を走る自動車のドライバー、つまり私達人間は現在の自動運転車よりも恐らく高い確率で重大な交通事故を起こしているからだ。これが社会問題として注目されることはほぼないが、かたやロボ・タクシーがたった一件の重大事故を起こしただけで、GMクルーズのように自動運転の事業中止に追い込まれてしまうのである。 サンフランシスコでのロボ・タクシー事業を成功させたウェイモ(グーグル)は、その後ロサンゼルスやアリゾナ州フェニックスにもサービス地域を拡大。そして2025年からは冒頭で紹介した日本を端緒に、海外への事業展開も視野に入れている。 一見、順風満帆に見える同社だが、ウーバーやGMクルーズなども含めた、これまでの自動運転ビジネスの経緯を振り返れば、当面はたった一件の死傷事故すら許されない綱渡りの状況が続いているのである。 【こちらも読む】『ロボ・タクシーの「クラクション」がうるさくて眠れない!…いま米国で起きている「新たな騒音問題」が浮き彫りにする「自動運転ビジネス」の現状』
小林 雅一(作家・ジャーナリスト)