キケンな組体操を強制する学校に喝!元学長のツッコミがぐうの音も出ない正論だった
● 教育はビュッフェに似ている 可能性を提供することが大切 大学は、自発的な学びを後押しする場です。立命館アジア太平洋大学(以下APU)では、学生が自分のやりたいことを見つけられるよう、アクティブラーニング(能動的な授業・学習)を積極的に取り入れています。 APUには、ビュッフェのメニューのように、たくさんのプログラムが用意されています。そしてその中から、学生に好きなものをピックアップしてもらいます。 ビュッフェで食事をするとき、僕は「いろいろな料理を少しずつ食べてみて、自分の口に合うものをもう一度がっつり食べるタイプ」ですが、教育もビュッフェに似ていて、子どもにさまざまな可能性を提供することが大切です。 ピアノでも、バレーでも、水泳でも、プログラミングでも、英会話でも、いろいろなことをできるだけ自由にやらせてみる。その中で、子どもがニコニコしてやっているものだけを残して、あとはやめればいい。本人のやる気がないものはしょせん伸びないからです。 親が子どもにできることは、「人と違っていいんだよ」「人にはいろいろな個性があるんだよ」と子どもの個性、多様性を認めた上で、「いろいろな世界を子どもに見せて、子どもの興味や関心を引き出す」ことに尽きるのです。
僕が日本の教育においてもっとも危惧しているのは、根拠なき精神論がまん延していることです。 少し前の話になりますが、象徴的な例がありました。 2019年10月17日、神戸市教育委員会は、市立小中学校の運動会・体育大会での組み体操で、「今年度に骨折6人を含む66件の事故が発生した」とする最終集計をまとめ、市総合教育会議に報告しています。 同市の組み体操を巡っては、久元喜造市長が市教育委員会と学校に中止を要請しましたが、教育委員会はすぐには応じず、「安全性に十分配慮した上で実施する」として対立が続いていました。 しかし、事故の集計結果を受けてようやく、同市教育委員会は「運動会・体育大会における組み体操の禁止」を通知するに至りました(2019年12月20日)。ここまでで何と2カ月も費やしています。 組み体操については、1年間で数千人がケガをしているというファクト(事実)があり、国連の「子どもの権利条約」委員会も問題視しています。また、大阪経済大学の西山豊名誉教授が日本スポーツ振興センターのデータを分析したところ、2018年までの3年間に、全国の学校で145件の事故が起きていることがわかっています(参照:NHKオンライン「組み体操『人間起こし』全国で事故多発 専門家『非常に危険』」2019年11月20日)。