THE NORTH FACEの名作ダウン「ヌプシ ジャケット」が発揮する驚異のパフォーマンス
ダウンジャケットと聞けば、「ヌプシ ジャケット(NUPTSE JACKET)」を思い浮かべる人は少なくないはずだ。 1966年に、カリフォルニアで誕生したザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)が1992年に発売したこのモデルは、もともとはエクスペディション(登山や探検のための遠征)を目的として開発されたアウトドア用の防寒ギアだった。 その後は山のプロフェッショナルたちから高い支持率を獲得しただけでなく、音楽やファッションと結びつくことで、ストリートでもブレイクを果たした。 今回はアウトドアとファッション、それぞれの歴史に足跡を残すヌプシ ジャケットの魅力を探ろう。
デスゾーンを想定したエクスペディション用ダウンがルーツ
お話をうかがったのは、同ブランドのデザイナーを務める佐々木継太さん。 「ヌプシ ジャケットの誕生は、’80年代に始まったエクスペディションシステムの開発と密接な関わりがあります。同シリーズは過酷な気象条件に対応するべく、シェルやインサレーション、アクセサリーなどをそれぞれ連結させて、相互の機能性を高め合うレイヤリングシステムでした。ザ・ノース・フェイスはこのシステムの開発で培ったノウハウを駆使して、ヌプシ ジャケットを完成させました」 ヌプシ ジャケットはデスゾーン(人間の生存が難しいほど酸素濃度が低い標高8,000m以上の高所)への即応力を実装したマウンテニアリング用のウエアとして、1992年に発売された。 モデル名はエベレストの南西に連なる山の名から。NUPTSE(ヌプツェ)の「NUP(ヌプ)」はチベット語で「西」、「TSE(ツェ)」は「峰」を意味する。
’90年代の音楽シーンを彩ったヒップホップクルーたちのアイコンに
ヌプシ ジャケットの存在が広く世に知られるようになったきっかけは、’90年代の音楽シーンにあった。 「メジャーチャートで人気を博したヒップホップクルーのメンバーたちが、こぞって自身のスタイルに取り入れたんです。 愛用された理由は、マンハッタンやブルックリンの厳冬期の寒さから身を守ることはもちろん、彼らが好んで着ていたインナーのスウェットパーカにヌプシ ジャケットの立ち襟が干渉しなかったからともいわれています」