THE NORTH FACEの名作ダウン「ヌプシ ジャケット」が発揮する驚異のパフォーマンス
2000年代に入ると日本のストリートでもブームに。 「当時、カリスマ人気を誇ったドメスティックブランド、SWAGGER(スワッガー)の恵比寿系が引き金となり、その人気は裏原系にも波及しました。さまざまなファッション誌に取り上げられ、定番ダウンとして広く認知されました」
2006年にはヌプシ ジャケットのフットウエアバージョンというべきヌプシ ブーティが登場。厳冬期に行うキャンプで、テント内で履くダウンソックスにラバーソールをつけたブーツは世界的なヒット作となった。
2011年には、Supremeとの最初のコラボレーションモデルが登場。当時の名だたるセレブリティラッパーがこのモデルを着用し、センセーションを巻き起こした。 デビューから30周年を迎えた2022年には、テキスタイルの染色工程を省くことで環境負荷に配慮したアニバーサリーモデルが登場。さらにここ数年、’90年代ファッションのリバイバルも手伝って、人気が再燃している。
ブランドのデザイン哲学を体現した機能美
なぜ、ヌプシ ジャケットはファッションアイコンとなり得たのか?
「その理由は誕生から現在までほとんど変わっていない完成度の高いデザインに尽きると思います。ザ・ノース・フェイスのデザイン哲学を表す言葉に、思想家やデザイナー、建築家などの肩書を持つバックミンスター・フラーの唱えた、『DO MORE WITH LESS』というものがあります。これは最小で最大を成すという意味で、ブランドとしても大事にしている言葉です。 つまり、必要最小限の素材や物質で最大限のパフォーマンスや効果を生み出す、という意味。ザ・ノース・フェイスのヌプシ ジャケットは、このデザイン哲学をもっとも体現したプロダクトの一つです」
佐々木さんの言葉通り、デザインには無駄がない。
「たとえば、肩と身頃のカラーが切り替えられたデザイン。バックパックのショルダーハーネスが当たる肩には摩耗に強いタフタナイロンを用い、身頃にはっ水加工を施したリップストップナイロンを採用しています。素材自体も切り替えることで機能性を高めています」