未就学児を育てる社員の半数が管理職。難病と闘う代表が導き出した働き方と「コミュニケーション」の大切さ
子育て社員も同じように結果を出している
ーー私が取材している「ネットスラング『子持ち様』問題」では、企業が何の対策もしていなければ子育て社員の業務の皺寄せが同僚に向かってしまうという話が出てきます。例えば子育て社員が途中で帰ることになった際、御社では同僚社員はストレスなく業務を肩代わりできているのでしょうか。 先ほど産休中や未就学児を育てる従業員10人のうち5人が管理職だとお伝えしましたが、管理職の当事者意識やコミュニケーション施策による「お互い様文化」の醸成によって、そのような問題は起きていません。 また、そのような問題の発生を防ぐためには「平等と公平の違い」を考えることも重要です。実は私も「潰瘍性大腸炎」という難病を患ってます。同じように他の従業員にも個別の事情があります。企業が本当の意味でひとりひとりに合わせるのは容易ではありません。 だからこそ、評価や給与を与える形での結果の平等ではなく、制度や相談できる環境を整えた上で、「みんなに公平に仕事を与え、公平に評価する」という機会の公平性を確保することが重要と考えています。 700社以上の企業と取引がありますが、時々「女性は優秀でも産休・育休でブランクができるため、下駄を履かせてでも男性を採用したい」という企業があります。しかし、子育て社員や女性を特別視するのではなく、優秀な人材が活躍できる場所をつくることが大切です。実際、うちでは子育て社員もしっかり結果を出しています。 ーー同僚へのインセンティブで対応している企業はありますが、主にコミュニケーションでこの問題を解決している企業は初めてです。 もちろん、いきなりコミュニケーション活性化施策だけを入れてもうまくいきません。コミュニケーションを重んじる社風や働き方を支える「人事評価制度」が前提として必要です。 例えば、当社の人事制度はひとりで仕事を進めるのではなく協力連携することに重きを置いています。「自分にしかできない仕事を作る」のではなく「どうすれば他の人でもできるか」という観点から日々の業務のあり方を考えることなどを求めているのです。 こうした根幹なくして、枝葉のコミュニケーション施策だけを入れて機能させるのは難しいと思います。結局、「何をすれば評価されるか」が働き方を決定づけるからです。 評価制度に合う人材を採用することも大切です。言われたことをただやるのではなく、前提から疑って仕組みを変える力や、コミュニケーション能力、協調性の有無などを見ています。こうした点は企業によって異なるため、自社の事業内容や社風も踏まえた制度設計が望ましいと思います。 ーー仕事の属人化も、長時間労働の温床の一つですね。 当社ではマニュアル作成や、普段から人と仕事を分け合う形での属人化の解消に努めています。子育て社員に限らず、独身社員が病気で長期離脱する可能性もあります。「担当者がいなくても回せる仕組み」の構築は必須です。 私自身、昔、同僚が事故に遭ってしまい、お願いしていた仕事がわからなくなってしまった経験があります。こうしたことはいつでも誰にでも起こり得ることです。 整理すると、全員が平等に活用できる制度、万一の時は互いにコミュニケーションを取り合って支え合う文化、公平に仕事が与えられ、公平に評価される仕組み、属人化の解消による業務の効率化。このような仕組みを、企業がフレックスタイム制度などと並行して整えていれば、バックボーンの違う従業員のいがみ合いも防げます。