同日にトロフィーを掲げた男女ペアが運命の勝利【舩越園子コラム】
<グラント・ソーントン招待 最終日◇15日◇ティブロンGC(米フロリダ州)◇7382ヤード・パー72> 【写真】美麗! ネリー・コルダのド派手ドレス 米ゴルフ界シーズンオフのTVマッチ「グラント・ソーントン招待」は、PGAツアーとLPGAのスター選手がペアを組んで戦う男女混合のチーム戦だ。 今年は12月13日から15日の3日間、米フロリダ州ネイプルズのティブロンGCで開催され、大いなる盛り上がりを見せた。 振り返れば、米ゴルフ界における男女混合のチーム戦は1960年以来、40年以上もの長きにわたってゴルフファンに親しまれてきたが、オフの非公式戦ゆえにタイトル・スポンサーの入れ替わりは激しく、1999年大会を最後に姿を消してしまった。 しかし、グラント・ソーントンがタイトル・スポンサーに付いたことで、昨年からは実に24年ぶりに男女混合チーム戦が復活した。 あいにくPGAツアーのビッグスターだったジョン・ラーム(スペイン)がLIVゴルフへ移籍した驚きのニュースが流れた直後の開催となり、ゴルフファンの視線がラーム移籍に奪われていたタイミングだったが、蓋を開けてみれば、想像を上回る大盛況となり、ジェイソン・デイ(オーストラリア)&リディア・コ(ニュージーランド)の「元世界一ペア」が見事な勝利を飾った。 デイもリディアも、男女の選手が力を合わせる大会を「みんなが求めている」「もっとやるべき」「もっとやりたい」と笑顔で語っていた。 そして今年、2年目を迎えた今大会には男女各16人、合計32人が参加。女王ネリー・コルダはPGAツアーのトニー・フィナウ(ともに米国)とともに出場する予定だったが、フィナウが開幕前に故障による欠場となったため、代わりに出場したダニエル・バーガー(米国)とペアを組み、優勝候補に挙げられていた。 今年限りで第一線から離れることを宣言したレクシー・トンプソンと、相変わらず高い人気を誇るリッキー・ファウラー(ともに米国)とのペアも注目の的だった。 しかし、リーダーボードを駆け上がったのは、30歳の米国人選手ジェイク・ナップとタイ出身の25歳、パティ・タバタナキトの“名門UCLA卒業生ペア”だった。 最終日を首位で迎えたナップ&タバタナキットだが、サンデー・アフタヌーンは大接戦となり、一時はアクシャイ・バティア&ジェニファー・カプチョ組に首位を奪われた。 終盤17番ではナップがティショットを池に落とし、ネイティブエリアにつかまっていたタバタナキトのティショットを採用する以外に選択肢は無かった。 だが、ナップはライの悪いその位置からピン1メートルに付けるスーパーショットを披露し、バーディ獲得。首位を奪還し、そのまま逃げ切って勝利した。 ナップもタバタナキトも米ジュニアゴルフ界で名を轟かせ、UCLAに進んでからはカレッジゴルフでも大活躍した。タバタナキトは2021年にプロ転向後、早々に「ANAインスピレーション」(現シェブロン選手権)を制し、ルーキーにしてメジャー初優勝。今季は「ホンダLPGAクラシック」で勝利して通算2勝目を挙げた。 一方で、ナップのプロキャリアは、なかなか輝いてくれなかった。2016年以来、草の根のミニツアーや下部ツアーでの下積み生活を続けていたが、今季初めてPGAツアーに辿り着くと、早々に「メキシコ・オープン」を制し、ルーキーにして初優勝を挙げ、一気に花開いた。 今年のナップの初優勝とタバタナキトの2勝目は、偶然にも、どちらも2月25日。同じ日に優勝トロフィーを掲げた2人が、この大会でともにピンチを乗り越え、チャンスをモノにしながら戦った3日間54ホールは、日ごろは目にすることができない熱戦で、運命的なものさえ感じられた。 「すべてが楽しかった。ジェイクとペアを組んだことで、とてもいい化学反応が得られて良かった」とタバタナキトが語ると、ナップも「一年の素晴らしい締めくくりができた。良いクリスマスが迎えられる」と満面の笑み。 男女混合チーム戦の良さが再確認できた、賑やかで楽しい大会だった。 文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)