マスク氏、英野党「リフォームUK」の党首交代を要求 極右活動家支持でファラージ氏と意見相違か
米富豪イーロン・マスク氏は5日、英野党「リフォームUK」の党首をナイジェル・ファラージ氏をから交代させるべきだと主張した。マスク氏は数週間前に、同党への寄付を検討していると報じられていた。 マスク氏は所有するソーシャルメディア「X」への投稿で、ファラージ氏には党を率いる資質がないと述べたが、その理由は明らかにしなかった。 ファラージ氏はこれについて、マスク氏がイギリスの極右活動家トミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)受刑者を支持していることについて、自分たちの意見が食い違っていることが原因だと示唆している。 ファラージ氏は、マスク氏のコメントに「驚いた」ものの、「自分の信念を売り渡すことは決してない」と述べた。 ファラージ氏はこの日、BBC番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」に出演、マスク氏を「友人」と表現したばかりだった。 ■服役中の極右政治家を支持、ファラージ氏は距離を取る マスク氏はかねてファラージ氏とリフォームUKの熱心な支持者で、昨年12月には「X」に「イギリスにはリフォームUKが絶対に必要だ」と投稿していた。 しかし今週、マスク氏がロビンソン受刑者を支持していることをめぐぐり亀裂が生じた。ロビンソン氏は現在、法廷侮辱罪で禁錮18カ月の刑に服している。 ロビンソン受刑者は昨年10月の裁判で、2021年の名誉毀損訴訟で敗訴した後、シリア難民に関する偽の主張を禁じる裁判所命令に違反したことを認めた。 マスク氏のコメントに対し、ファラージ氏はSNSに「イーロンは素晴らしい人物だが、この点については残念ながら意見が異なる」と投稿した。 「私の見解は変わらない。トミー・ロビンソンはリフォームUKにふさわしくない。そして私は決して、自分の信念を曲げたりしない」 ファラージ氏がこの声明を発表した数分後、マスク氏は「トミー・ロビンソンを今すぐ釈放しろ」と「X」に投稿した。 5日に放送されたインタビューでファラージ氏は、マスク氏を「リフォームUKをかっこよく見せる英雄」と称賛していた。 一方で、マスク氏に後押しされるからといって、「彼が『X』に載せるすべての意見に同意しなければならないという意味ではない」とも述べていた。 ■リフォームUKへの献金はどうなる ファラージ氏は、ドナルド・トランプ次期米大統領の就任式で、ロビンソン氏を含む様々なことについて、マスク氏と話し合う予定だと述べた。 ファラージ氏は次期大統領と密接な関係を維持している。また、次期大統領はマスク氏に政権内での役割を与えている。 今回の件がファラージ氏とトランプ氏の友好関係に影響するのかどうかが、今後問われることになる。 ファラージ氏は2018年にリフォームUK(当時はブレグジット党)を設立。2024年に党首に復帰した後、下院議員に当選した。 ファラージ氏は昨年12月、トランプ次期米大統領が米フロリダ州に持つ私邸兼リゾート「マール・ア・ラーゴ」を、リフォームUKの党財務担当ニック・キャンディー氏と共に訪問。現地でマスク氏と会談し、党への寄付について「公開交渉」を開始した。 マスク氏の父エロル氏はその後、マスク氏がリフォームUKに1億ドル(約157億5200万円)を寄付するため、イギリスの市民権獲得に向けて準備するかもしれないと示唆した。エロル氏は12月初め、英保守派ニューステレビ局「GBニュース」に「私はイギリス市民権を得る資格があるので、おそらく息子もそうだろう」と述べていた。 南アフリカ出身で、今はアメリカ市民権を持つマスク氏は、イギリスでは個人的な政治献金を行うことはできない。ただし、所有する「X」社のイギリス支社を通じての献金は可能だという。 ファラージ氏は後に、この金額に関する憶測は「馬鹿げている」と述べた。 現時点では、少なくともマスク氏がリフォームUKへ巨額の寄付をするといううわさは保留中のようだ。 ■労働党政権への批判繰り返す ファラージ氏との会談以来、マスク氏はイギリスの政治にますます関心を示しており、特にキア・スターマー首相への批判に焦点を当てている。 マスク氏は今週、リフォームUKと最大野党・保守党が要求している、組織的な児童性的虐待に対する調査について、「X」で繰り返し取り上げた。 労働党が率いるイギリス政府はかねて、イングランド北西部グレーター・マンチェスターのオールダムにおける性的虐待事件に関する調査について、政府が主導すべきという要請を拒否。調査は地方自治体が主導すべきだと、政府は述べている。 これに対しマスク氏は、イングランドとウェールズの検察トップだった当時のスターマー氏が「レイプ・ギャング」を適切に起訴しなかったと非難した。 また、労働党政権で女性・少女に対する暴力問題を担当するジェス・フィリップス政務次官については「刑務所に入るべきだ」と述べ、同氏を「レイプ・ジェノサイドの擁護者」と呼んだ。 BBCのローラ・クンスバーグ司会者とのインタビューで、マスク氏のコメントについて尋ねられたファラージ氏は、マスク氏は「非常に厳しい言葉」を使ったが、同氏が「X」を所有するようになったことで「言論の自由が復活した」と述べた。 グレーター・マンチェスター行政区が2022年に行った第三者調査では、オールダムの警察と地方自治体の「重大な失敗」により、同地域の立場の弱い子供たちが性的搾取にさらされていたことが明らかになった。 これについて政府は、国家による調査の要求を拒否し、代わりにオールダム行政区に独自の調査を設置するよう求めた。保守党政府も2022年に、同様の要求を拒否している。 フィリップス氏とイヴェット・クーパー内務相は保守党への書簡で、地方自治体がすでに調査委設置に着手していると説明。2022年の児童性的虐待調査にも言及した。この調査では、養護施設やキリスト教教会、家庭、またはグルーミングギャングによる虐待が調査された。 報告書は、ロザラムやロッチデイル、テルフォードといった地域について、複数のグルーミングギャングに関する以前の調査をまとめ、併せて報告している。 ウェス・ストリーティング保健相は5日、この報告書が児童性的虐待に対処するために行った政府への20の勧告を、「迅速に実行する」ことを優先していると述べた。 ストリーティング氏はBBCに対し、マスク氏のフィリップス氏への批判は「恥ずべき中傷」で、「キア・スターマー氏やジェス・フィリップス氏のような人々は、妻に暴力をふるう人間やレイプ犯や小児性加害者たちを実際に逮捕するために、大変な努力をこつこつと実践してきた人たちだ」と述べた。 (英語記事 Musk says Farage 'doesn't have what it takes' to be Reform UK leader)
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