「キスしたからってその先もOKとは限らない」性と人間関係のこと…“まるっと”学ぶ【包括的性教育】
■日本と世界の違い「セックスについてはどこまで教えよう」?
庭野:モデル事業として、先生の研究班が『まなブック』を作り、一部の学校で取り入れているところがあるということですが。 西岡:研究の一環として、都内の私立の中高一貫の女子校の校長をはじめとした先生方にご協力いただきまして、中学1年生と高校1年生と高校3年生の生徒に、『まなブック』を使用して、保健体育の授業を行ってもらいました。 庭野:日本の学習指導要領では、どの学年でどの内容を教えるということがかなり厳密に文科省によって決められています。例えば、「セックスについてはどこまで教えよう」という点でも制約があると思うんですが、学習指導要領と国際的なガイダンスの両方で整合性をとって作っていく際に、どのように工夫されましたか? 西岡:国際的なガイダンスなので、日本の社会的、文化的な背景を含めた議論が必要と思いまして、“(国際的なガイダンスで)レベル2に書かれているから、(まなブックの)レベル2に掲載”といったわけではないところが一部あります。学校の先生や保護者の方などさまざまな方に意見を伺って、今の形を作っています。 学習指導要領上では触れていないものに関しては、本冊と別冊で、冊子を分けています。そして、別冊を使って学習するかどうかは、授業を行う学校の先生や保護者の方のご意向などを話し合って、決めてもらいます。
◾️SNSの普及で…“大人もレベル1から勉強を”
庭野:私は高校生の息子がいるのですが、高校生ぐらいで学びはじめても間に合いますか? 西岡:大学の授業でこうした冊子を作っていることに触れることがあるのですが、何年か前にまだ全て完成していない時期にレベル1の冊子を紹介したところ、「大学生の私たちが見てもすごく勉強になる内容だった」というような感想をもらったことがありました。 日本では、幼い頃からの継続的な発達段階に合わせた学習がこれまで行われてきませんでした。なので、保護者の方も、どうやってお子さんに伝えたらいいかわからず、話しづらいということもあるので、大人の方もレベル1から、勉強していただけたらと思います。 庭野:こうしたことを学ぶ機会が先生も親もなかなかなかったので、今からでも少しずつ学んでいければいいということですね。 性加害者の治療にあたっている専門家が彼らに包括的性教育を行ったところ、「触っちゃいけない」とか、「相手の気持ちを考える」ということをもっと若い時に知りたかったと言われたそうです。 西岡:今、インターネットやSNSなどを幼い頃から目にする機会が多く、誤った情報が入ってきてしまうことがあると思います。なので、科学的に正しい知識を幼い頃から発達段階に合わせてきちんと学ぶことが大切になっていくと思います。
■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。 “話す”はインクルーシブな未来のきっかけ。あなたも輪に入りませんか? 番組ハッシュタグ:#talkgender