「キスしたからってその先もOKとは限らない」性と人間関係のこと…“まるっと”学ぶ【包括的性教育】
庭野:レベル1では「み~んなかぞく」というページで、お母さんが2人、あるいはお母さんだけといった、いわゆる夫婦が“男女”ではない家もあるということ。また、「かぞくのやくわり」でも、お父さんが食事を作っていて、息子は洗濯物を畳むとか。つまり、“お母さんが食事をつくる”といった固定的な観念を最初の1ページから崩しているんですね。 西岡:レベル2になると、第二次性徴が始まってくる頃ですが、冒頭に「性はグラデーション」と書きました。性別に違和感がある生徒さんもいらっしゃるので、第二次性徴のからだの成長のことから始まってしまうと、そこから先はシャットアウトということにもなりかねません。 庭野:自分は男の子だと思うが、からだが女の子の場合に、生理が来てしまうと悩んでいる人に最初からその話をすると、ものすごく悩みが深まってしまいますよね。 西岡:人の数だけ性がありますよということですね。男らしさ、女らしさではなく、大切なのはどんな自分でいたいかということです。
◾“生涯で6年半”月経中の快適さは現代の重要なテーマ
西岡:レベル2でイチオシのページは、「月経中も気持ちよくすごすコツ」です。『国際セクシュアリティー教育ガイダンス』には、月経中も気持ちよく過ごすコツについてアドバイスをするべきと書いてあるんです。 庭野:たとえば、からだを冷やすと痛みが強く感じられることがあるから、暖かい下着などを身につけましょうとか。 西岡:現代の女性は妊娠や出産の回数が減っていて、昔に比べると、月経の回数や日数が増えています。計算すると、1回の月経が例えば5日間あるとすると、生涯で約6年半もの間、月経中ということになります。そうすると、いかにこの6年半を快適に過ごせるかというのは、非常に重要なテーマになってきていると私は考えています。 庭野:女子だけでなく男子もページを見れば、「こういうふうに女の子たちは大変なんだから、一緒に考えてあげよう」となりますよね。 西岡:それから、中学生くらいになると付き合う子達も増えるため、付き合うとはどういうことかを書いていたり、性的同意についてはイエス(と言った時)だけですよと明確に伝えたりしています。 庭野: “黙っているからいいんじゃないか”“ニッコリしてるから大丈夫じゃないか”と抱き付いちゃうのではなく、「いいよ」と言わないと、それは同意を得たことにならないですよね。 また、レベル3の冊子を見ると、「キスしたからってその先もOKとは限らない」「1回OKでも、その次もOKとは限らない」と細かく書いてありますね。 西岡:非強制性、対等性、非継続性という3つの大切なことを書いています。