ジュビロ磐田の遠藤保仁が移籍2戦目で勝利貢献…支配率を高めチームを”遠藤色”に染める熟練の技とは?
これは長崎のセンターバック二見宏志が、何とかコーナーキックに逃れた。前半から数えて4本目のコーナーキック。スコアレスドローに終わった前節の松本山雅FCとのデビュー戦から、すべてのセットプレーでキッカーを任されてきた遠藤の胸中にも期するものがあった。 「何回かニアに引っかかっていたので、もっといいボールを蹴らなければいけないと思っていました」 言葉通りに前半24分の2本目、同37分の3本目は、ともにニアサイドにいた相手選手にクリアされていた。果たして、アウトスイングから放たれた後半2分の4本目は、ニアサイドを越えて急降下。中央で大森とMF名倉巧が競り合った末に、ファーサイドにいた三木の前に転がってきた。 「ホームで(初ゴールを)取れたのは、自分にとってもファン・サポーターにとっても嬉しいことだと思います。ジュニアユースやユースの選手たちの見本となれるように、もっともっと活躍したい」 無我夢中で利き足の左足で押し込んだプロ初ゴールに三木は、笑顔を弾けさせながら遠藤のもとへと駆け寄っている。山雅戦でともに途中出場していたルキアン、三木の2トップとピッチ上で共演した29分間で得た情報に、実戦のなかで微調整を施しながら遠藤もプレーしていた。 「100%わかっているわけじゃないので手探りの状況でしたし、パスのタイミングがずれることもありましたけど、それは仕方のないことだと思っていました。ただ、ルキアンにしても三木にしても、能力が高い選手だとわかっているので、もっともっとチャンスを作れるんじゃないかと思っています」 フル出場した山雅戦から中3日で迎えた長崎戦でも、先発した遠藤は試合終了を告げるホイッスルをピッチの上で聞いた。
頻繁にポジションを変えながら味方からボールを呼び込み、フリーの味方へ的確にパスを散らし続ける。守備陣と攻撃陣のリンク役を担い、ジュビロのボール支配率を一気に高めたいぶし銀のプレースタイルが、長崎戦ではさらに輝きを増していた。 例えば前半10分。バイタルエリアに顔を出した遠藤は、攻め上がってきたガンバ時代の盟友、DF今野泰幸からのパスをワンタッチでルキアンに通す。身体を反転させたルキアンが放ったシュートはゴールバーの上を越えたが、遠藤はこぼれ球に備えてペナルティーエリア内へと侵入していた。 このシーン以外にも、何度かプレーエリアが相手ゴール前まで広がっていた。これは新天地の仲間たちとの相互理解をさらに深め、リスクを冒せるようになった証でもある。さらには、スコアレスドローだった敵地での対戦で後塵を拝していたボール支配率でも、長崎を大きく上回った。 「相手にボールをもたれる展開が続いたので、自分たちの思い通りにプレーする時間が短かった」 長崎のボランチとしてホーム、敵地でのジュビロ戦を経験している加藤大は、相手の変化をボール支配率に帰結させた。それは遠藤がガンバ時代から求めていた試合内容とも一致する。 「僕が来るまでのチームの状況があまりわからないので比較はできませんけど、ボール支配率は高くなっていると思いますし、チャンスもたくさん作れている。そこはポジティブに考えていますし、2試合連続の失点ゼロは素晴らしいと思うので、これを続けていけば順位を上げていけると思います」 フェルナンド・フベロ前監督に代わり、今月1日に就任した前強化本部長の鈴木政一監督は、ボールを奪ってからのカウンター、ボールと相手を動かしながらのチャンスメーク、セットプレーとすべての局面からゴールを取れるサッカーを目指すと選手たちに伝えた。指揮を執って3戦目でセットプレーからのゴールを具現化させ、初勝利を導いた遠藤への評価を聞かれると思わず笑顔を浮かべた。