東京にこだわらない女たち 「ここには余白がない」
情報爆発時代の中で、私たちはさまざまな「HAVE TO:しなければならないこと」に囲まれている。でもそれって本当にやらなきゃいけないこと? 働く女性たちを研究している博報堂キャリジョ研プラスによる連載「XXしない女たち」。今回は「東京にこだわらない女たち」。「東京」という場所から離れて、日本各地、様々な場所で自由に活躍する女性たちに話を聞きました。
「上りのエスカレーター」を降りたかった
教育事業に携わるYさん(34)は神奈川県出身。28歳のタイミングで島根県に移住した。当時、名前を知られた大手企業に勤めていたYさんは、企業のブランドで自分の実力以上の評価をされているように感じていた。神奈川県に生まれ、東京の中高一貫校に進学し、一流大学を卒業し、大手企業に就職。いわゆる“エリート”だったYさんは、社会人6年目、そろそろ転職をと考えてみた際、「全然違う土地に行って、等身大の自分を見つめてみたい」と思った。 「上りのエスカレーターを一度降りたかったのかもしれません。島根だったら、私のことをみんな全然知らない状況だったし、そうした素の自分に興味がありました」。親も都会育ちで、価値観が偏っているな、と幼少期からうっすら思っていたので、違う土地に住んでみたかったという。「せっかくなら、自分のやりたいことをやれる場所で、と思い、大学時代から興味のあった教育事業に、島根で携わり始めることにしました」 移住してからも、Yさんは「とても楽しい毎日」と語る。正直、最初は島根という土地が合わなかったら東京にいつでも帰ろう、くらいの気持ちだったという。でも、行ってみたら1か月で楽しさを実感した。 「東京は人が多いけど、おもしろい人に会える確率はそんなに高くない。島根では、本気で人生をかけておもしろいことをやろうとしている人たちに出会える確率が高くて、こういう人たちと働いていた方が心地よいなと感じました。私が住んでいる場所は島根の中では都会なので、車がなくても自転車で生活もできて、心地よい。島根の人たちには『よそから島根に来てくれてありがとう』という雰囲気があり、思ったよりも早くなじむことができました」