「東京メトロが運営」ロンドンの鉄道は何が変わるか 時間の正確さに期待感も、「日本流」打ち出すのは困難か
GTSが指名を受けた理由について、一部ではMTRが香港を拠点としていることから「(同社が)中国とも深くつながっていることを嫌った」との見方もある。 ■「運営に参画」実際には何を担う? 今回GTSが獲得したのは、エリザベス線で列車を運行しサービスを提供する「運営権」である。多くの人が「では、車両や線路、駅といったインフラの保有や管理は誰が行うのか?」と疑問を抱いたかもしれない。 日本では鉄道施設の保有と運行・運営が一体となっていることが多いため、「運営権だけ」の取引はやや馴染みが薄いだろう。エリザベス線で採用されているのは「コンセッション方式」と呼ばれる仕組みである。
この仕組みは、日本のスポーツ施設や公共施設で導入されている「指定管理者制度」に似ている。指定管理者制度では、自治体が所有する施設を、運営権を委託された民間企業や団体が管理・運営する。 これと同じように、エリザベス線はインフラ(線路や駅)をTfLが所有し、GTSはそのインフラを活用して列車を運行し、乗客にサービスを提供する役割を担う。従業員は現在の運営会社から引き継ぐ。 では、収益はどのように分配されるのか。乗客からの運賃収入やその他の収益はTfLが一括して管理する。一方、GTSは運行業務の対価として、TfLから固定報酬と成果報酬を受け取る仕組みである。この方式は、運賃収入リスクを運行会社が負う「フランチャイズ方式」とは異なり、リスクをTfLが負担する点が特徴的だ。
今回の契約を通じ、東京メトロは日本の首都圏で培った「時間に正確な運行」や「高品質なサービス提供ノウハウ」を海外で実践する機会を得ることとなった。今回の案件は、ロンドンの鉄道サービスの質向上に「日本の鉄道界が寄与する」との期待をイギリス側でも集めていると見ることができようか。 では、イギリス主要新聞の論評をいくつか見てみよう。 経済紙のフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)は、東京メトロの99%という高い定時運行率に注目。エリザベス線の現在の定時運行率83%を大きく上回るこの実績に、「サービス向上への期待が高まる」と評価している。