【行正り香さんにきく〝50代。これからの住まい〟に思うこと〟③】心地よい住まいへの鍵、それは絵を飾ること。一枚の絵で暮らしが変わり、暮らしが変わると人生が変わる
◆絵で部屋にクラス感が出る。するとそれにふさわしい空間づくりがしたくなってくる
「極端な話に聞こえるかもしれませんが、実は一枚の絵画をお住まいに飾ったことで、お宅の雰囲気だけでなく、生活の質そのものまでもががらりと変わった方がいます。 以前、私が野崎さんの展示会のディレクションをしたとき、展示会で絵を購入なさった女性がいらっしゃいました。 たまたま私がその絵をお届けに伺ったのですが、お話ししていたら『この絵にふさわしい家に変えたい。そのためにリフォームを考え始めたのですが』と相談されました。 それでご予算やどれくらいの規模のリフォームをイメージなさっているのかなどお尋ねしたのですが、その結果、工務店に依頼するような大がかりなリフォームではなく、家具やインテリアアイテムを新たにあつらえる方法を提案しました。 そのお宅は新築で、すでにきれいだったのですが、『これだ!』と思った一枚の絵を飾ることになったのを機に、全然違う空間へと生まれ変わりました。(※そのお宅のビフォー、アフターを新刊『人生を変えるリノベーション』でご紹介しています) 絵にはそれだけ大きな力があるのだと思います」
◆美術館でセンスを磨き、複数の絵を飾ってみる
とはいえ、「絵は高いものだからなかなか私には買えない」と思う方がいらっしゃるかもしれない。 「でも、『私には買えないから』と何もしないのではなく、買えないのであればこそいちばんハイエンドなものを見ることをおすすめしたいのです。 『ハイエンドなものを見る』とは、美術館に行くこと。美術館でたくさんの絵を『自分がピンとくる絵はどんなものだろう?』と考えながら見てみるのです。そうやって絵を見る目を養うのです。 私もよく美術館に行きますが、そのときはいつも『この中ではどの絵を家に持ち帰りたいか』という観点で見て回っています。 美術館で絵を見ていると、モディリアーニ、ゴッホ、セザンヌなど個人では絶対にオリジナルを買えない巨匠の絵も多く見ることになります。それらを見ていく中で、『こういう絵を家に飾れたら』とか『確かに迫力があってすばらしい絵だけれど、これがもし部屋にあったら…落ち着かないな』といったパターンが見えてくるはずです。 そのようにして自分の好みや系統がわかってきたら、そこから画家を探していきます。画家によって絵の値段はさまざまですから、自分好みの絵を描いていてなおかつ予算内で購入できる画家を探していくのです」 これは家具でも同じこと。 「『どうせ買えない値段だから見ない』のではなく、いいものをたくさん見ることでセンスを養い、自分が『いい』と思ったテイストをどうしたら予算内で実現できるのか、と考えていくのです。 このようにして、みごと、予算内で買える好みの絵に出会い、手に入れたとします。すると、次はどう飾ったらいいのかと悩むかもしれません。絵の飾り方も美術館でヒントを得ることができます」